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DP2 Merrillレビュー&RX100、M9、NEX-7、X100との比較

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DP2 Merrillは中判の画質を持つコンパクトカメラなのか?


昔は何もかもが単純だった。

もし高画質の写真を撮りたかったら、フィルムやセンサーの大きなカメラを使うだけでよかった。もし連写速度の速いカメラが欲しかったら、一眼レフにモータードライブを付ければよかった。もし小型で軽量のカメラが欲しかったら、画質に妥協をしつつも、コンパクトカメラを買っていればよかった。

しかし、世の中は常に変化をし続けている。安価なコンパクトカメラは現在絶滅の危機に瀕している。大半の人は今やスマートフォンで写真を撮り、その結果、コンパクトカメラの売上は毎年25%かそれ以上のペースで減少を続けている。高級一眼レフはかつて最高の連写速度を誇っていたが、現在は電子シャッターを備えたミラーレスカメラの方が連写速度が速く、なおかつ安価であることが多い。

中判やデジタルバックは、最高の画質、とりわけ高解像度と高ダイナミックレンジを求める人には必須のカメラだったが、3600万画素のニコンD800とD800Eの登場によってその常識が覆ってしまった。さらに、噂ではキヤノンが4600万画素の新型機を今年か来年の初頭に発売するという。

世の中には数多くの写真家がおり、そのニーズと予算は様々なので、デジタルカメラ市場には依然として多種多様な製品が生まれる余地がある。しかし、市場全体が「高画質」というベクトルに向けて収束しており、その速度は日を追うごとに増加していることも、また確かなことのように見える。




Ragweed Fence. Clearview, Ontario. September, 2012
Sigma DP2 Merrill @ ISO 100

ピクセル等倍 画像をクリックすると拡大します



DP2 Merrill


DP2 Merrillのスペックの詳細を確認したい方はシグマのHPをチェックしていただきたい。簡単に言うと、DP2 Merrillはコートのポケットに入る、4600万画素のフォビオンX3センサーを搭載した、小型のカメラである。レンズは30mm F2.8の単焦点で、これは35mm換算で45mmになる。

Merrillの名前はフォビオンの設立者の一人で科学者のディック・メリルの名から取られている。

詳細は後述するが、ここでとりあえずのDP2 Merrillの評価について書いてみよう。DP2 Merrillは、よくあるコンパクトボディに大型センサーを入れただけのカメラとは全く別のカメラだ。ある部分ではDP2 Merrillは他のカメラに全く歯が立たないが、他の面ではライバルを全く寄せ付けない。例えば、子供の誕生日パーティーを撮影するのにコンパクトカメラを探している人は、他のカメラを探すべきだ。DP2 Merrillはそういうカメラではないのだ。

とりあえずパッと思いついたDP2 Merrillの良いところと悪いところを羅列してみた。

DP2 Merrillに足りないもの


手ぶれ補正
内蔵フラッシュ
シーンモードやアートフィルター
電子ビューファインダー
ズーム
液晶画面の調整ができない

DP2 Merrillのダメな所


低光量だとAFが合わない
速いカードを使っても書き込み速度が遅く、書込み中は画像の確認ができない
動画がVGAでしか撮影できない
レンズが暗い
バッテリーが全然持たないので最初から二つ用意されている
解像度は高いが反応が遅くグラグラ揺れるライブビュー
ISO400以上は低画質
青空などをモノクロ変換した時に現れるバンディングノイズ
低機能な付属現像ソフトしか使えず、他のソフトが対応する見込みもない

時々色の再現がおかしくなったり、赤色付近で色転びが起こる。これはセンサーが原因なのかSPPのバグなのか不明

シャッターを半押しした時にはMFは補助としてしか使えず、AFロックが働いている時はMFが動作しない。

明るい時でもオートISOではISO100が使えない。この設定はカメラが手ぶれ補正を持たないからなのかもしれない。

私が購入したDP2 Merrillは二箇所センサーにゴミが付いていた。沈胴しない、固定レンズのカメラにはあってはならないことである。


DP2 Merrillの良い所


センサーに完璧にマッチした世界最高クラスのレンズ
素晴らしい解像度。この価格帯ではずば抜けた性能であり、より高価なカメラでもDP2 Merrillには及ばない
言葉で説明するのは難しいが、見ただけで違いがわかる独特な「フォビオン画質」。多くの人がフォビオンには空気感や立体感を感じている
拡大してピントを合わせられるMF。ただ、合焦サインが出ないので、ピントの山は掴みづらい
7枚連写が可能。しかし、書き込み速度は遅くバッファが空になるのに時間がかかる

DP2 MerrillのAF速度が遅いという人がいるが、私はそうは思わない。ピントが合う被写体ならすぐにAFは合うし、ピント精度は恐ろしいほど正確だ。問題なのは低照度だったり低コントラストな被写体の時で、そういう場合はピントが前後を繰り返して、結局合わないこともある。その点に関して言えば、他社の最新のコントラスト方式AFより性能は劣る。そういう場合はMFを使えば良い。

シャッターボタンを半押ししてAFを固定したあとでもMFリングを回して拡大画面でAFの微調整ができる。これはとても便利な機能で、AFが迷うときはMFで当たりをつけておいて、AFでさらにピントを追い込むという時にも使える。

DP2 Merrillのボディの品質や触感はとても素晴らしい。ゴツゴツしててかさばるカメラだけれども、決して重すぎることはない。グリップなどエルゴノミクスを考慮した部分はほとんどないけれど、実際に手に持ってみるととても持ちやすい事がわかる。

DP2 Merrillにはうまく言葉では表せられないが、他のカメラでは得られない、何かカメラとして「正統的な」要素があると感じられる。あたかも、こののっぺりとしたデザインそれ自体が、DP2 Merrillは誰にでも使いこなせる手軽なカメラではなく、特定の目的のために作られた、ストイックなカメラだと主張しているかのようだ。

もちろん、ボディに外付けグリップを付けるのは有意義だと思うし、私の知る限りでは、今開発中のグリップが一つある。もしそれを試す機会があればまた報告したい。

上述したように、DP2 Merrillにはシーンモードもアートフィルターもない。これは撮影方法を知らない素人や、フィルターをいじって遊ぶだけの道楽者のためのカメラではないのだ。




Lift Bridge. Toronto. August, 2012
Sigma DP2M @ ISO 200

ピクセル等倍


DP1 Merrill


DP2 MerrillにはDP1 Merrillという兄弟機がある。DP1 MerrillはDP2 Merrillとほとんど同じ機能を持ったカメラだが、DP2の30mm F2.8レンズとは異なり、19mm F2.8(35mm換算で28mm)のレンズを持つ。DP1 Merrillは2012年の9月中旬に発売を予定しており、値段はDP2 Merrillと同じ1000ドルである。

DP1 MerrillのレンズもDP2 Merrillと同じくらい高性能であるようなので、どちらのモデルを選ぶかは単純に広角が好きか標準が好きかという個人の好みの問題だろう。もちろん、両方手にしたい人も多いだろうが。


SD1 Merrillはどうなのか?


DP2 MerrillはSD1 Merrillと同じセンサーを使用している。画質に関して言えば、一年ほど前の2011年6月に私がSD1をテストした時と比べて、はるかに良くなっている。

今だから言えることだが、SD1の発売は、これまでのカメラ産業の歴史の中で、最悪の営業ミスだったと私は思う。2011年の5月に小売価格が9700ドルだと発表されると、人々は最初それを冗談だと思い、次に呆然とし、最も重要なことだが、最後に財布の紐を閉じてしまった。実際の販売価格は発売後すぐに8000ドルまで下落し、その後も価格は下落を続けた。最終的には社内での議論もあったのか、3000ドル付近までSD1の価格は下落した。

しかし、問題なのは、その間に他のライバルメーカーがD800/Eや5Dmk3といったカメラを3000ドル付近の価格帯で発売を始めたということだ。2012年8月現在、SD1 Merrillの価格は1999ドルである。この値段は1年前に設定されるべきだった。なぜなら画質を除いて、SD1の性能は中級機そのものだったからだ。カメラの作りや機能面を考えてもキヤノンやニコンの高級機の足元にも及ばない。

傲慢にもSD1を「ハイエンド」だと考えていたのはシグマの経営陣だけだったに違いない。しかし今ではもうパンドラの箱は開いてしまった。市場には強力なライバルがひしめいている。SD1はボディ性能だけではなく、画質面でも厳しい勝負をしなければならないのだ。

現在の2000ドル以下の価格ならば、SD1 Merrillに魅力を感じる人がいるのは確かだろう。しかし、ここでわざわざSD1の価格の変遷を紹介したのは、一年前に10,000ドル近くしたカメラの画質を、さらに改良を加えられた形で、1000ドル以下で手に入れることが可能だということを強調したかったからだ。

もちろんDP2 Merrillは一眼レフではないからレンズ交換はできない。しかし、最新のフォビオンX3の画質を求める人ならば、DP2 Merrillは正しい選択であると言える。


フォビオンX3


シグマの使っているフォビオンX3という技術はとても毀誉褒貶の激しいものだ。デジタルカメラの歴史の中で、オンライン上でも実際のカメラ愛好者の集まりでも、モザイクフィルターと垂直分離のどちらが優れているかという議論ほど、激しく意見が別れたものもないだろう。

私自身もこれまでSD1のレビューを含めて何度もフォビオンの技術についてコメントを書いてきた。ここでその長所と短所や技術的な内容について全て繰り返すことはしないけれども、この文章を初めて読む人のために簡単に書いてみようと思う。

垂直分離VSモザイクフィルター


フォビオンX3以外のセンサーは、CCDもCMOSも全て、色を分離するためにベイヤーパターンと呼ばれるモザイクフィルターを使用している。シリコンそれ自体は色を感知することができないので、デジタルカメラの歴史の中で、様々なカラーフィルターが試されてきた。現在はベイヤーパターンが最も普及しており、コンパクトカメラから中版デジタルカメラまで、ほとんど全てのカメラが採用している。

フォビオンは赤、緑、青のそれぞれの色を感知するセンサーを水平ではなく垂直に配置している。なので、フォビオンはモザイクフィルターを必要とせず、結果として偽色も発生しない。偽色が発生しないということはローパスフィルターも必要としないということであり、結果としてより解像度の高い画像を作ることができる。

ベイヤーパターンでは画像サイズと実際の画素数が等しいので画像サイズをそのまま画素数としてカウントしているが、フォビオンはそうではない。私たちの多くはベイヤーパターンでの数え方に慣れているので、フォビオンの画素数がいくつなのかは判断が難しい。







DP2 Merrillレビュー&RX100、M9、NEX-7、X100との比較(その2)

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画素数についての考察

ベイヤーパターン

フォビオン



シグマが現在は子会社のフォビオンX3を使い始めた頃から、デジタルカメラの画素数をどのように数えればいいのかが問題になった。これが問題になるのはある意味で必然だったといえる。というのも、ベイヤーでは、例えば2000万画素あったとしても、全ての画素で輝度情報を得ているわけではないからだ。

ベイヤーは一つの赤と青に二つの緑を組み合わせており、そのうち主に緑だけが解像度に貢献している。青と赤は基本的に色情報としてしか扱われない。

それに対してフォビオンは対応する色の異なる画素が垂直に配置されているので、全ての画素で色情報と輝度情報を同時に記録できる。DP2 Merrillの画素数は4600万画素だが、そのうち3分の2は同じピクセル上に垂直に配置されているので、実際に出力される画像は4600万ピクセルよりも小さくなる。

このベイヤーとフォビオンの違いが問題を複雑にしている。ベイヤーは仮に2000万画素あったとしても、その全てが解像度に貢献しているわけではない。実際にはおおよそ画素数の3分の2くらいの解像度しか持たないことが多い。しかし、市場に出回っているデジタルカメラのほとんど全てがベイヤーを採用しており、条件は同一なのだから、このことが問題となることはほとんどなかった。しかし、そこにフォビオンが加わると問題になるのだ。

シグマはメリルセンサーの画素数を4600万画素だと公表しているので、問題がややこしい。もちろん、画素数だけを見れば正しいかもしれないが、ベイヤーの4600万画素と同等の解像を持つかというと、そうではない。シグマ自身もSD1を発表した時に、3000万画素のベイヤーと同等の解像度だと公表している。この解像度論争を決着させるには何らかの精査が必要だとは思うが、この3000万画素相当という発表は現実に近いと私自身は思う。

さらに、フォビオンはローパスフィルターを使っていないので、話はもっとややこしくなる。フォビオンはモザイクフィルターを使っていないので、偽色が発生せず、それゆえローパスフィルターを必要としない。それなので、フォビオンはローパスフィルターを使っている他のデジタルカメラと比較して、クリアで解像度の高い画像を作ることができる。しかし現在では、ニコンD800EやライカM9など、ローパスフィルターのないカメラが市場にいくつか出まわっており、問題は混迷を極めている。


とりあえず、この話はここで終わりにしたい。私自身もこの問題にはこれ以上の興味はない。ネット上では依然として議論が盛んなようだが、大半の人にとってはこれ以上深入りしてもあまり有意義ではないだろう。私の知る限り、写真に真剣に取り組んでいる人達は、スペック上の画素数よりも、実際に撮られた写真を見て判断することの方が多いからだ。彼らは数字には現れない様々な要素が写真の質を決めるということを知っているのである。

現実にはほとんどの状況で、だいたい1000万画素以上の画素数があれば十分である。それ以上の画素数が必要なのは巨大なプリントを展示する必要のある、一部の写真家だけだろう。もちろん、4000万画素や6000万画素、8000万画素といった画素数で写真が撮れるならそれに越したことはない。しかし、写真の質を決めるのは解像度だけではなく、他の様々な要因の組み合わせなのである。

シグマはDP2 Merrillの画素数を4600万画素だと公表し、大伸ばしにも耐え、ベイヤー3000万画素相当の解像度を持つとしている。実際の画像サイズは1500万ピクセルであり、これはAPS-Cサイズとしては全く他社に見劣らない数字だ。私自身の感覚で言えば、DP2 Merrillはおおよそベイヤー2400万画素から2800万画素あたりの解像度を持つのではないかと思う。しかし、上にも書いたが、実際の数字がどれくらいかはネット上の議論に任せて、あまり深入りしないほうがいいだろう。



比較


以下の写真はDP2 Merrillと私が所有しているカメラとの解像度の比較である。あまり厳密に測定したものではないが、これらのカメラをDP2 Merrillと比較することには意味があると思う。画像はできる限り同じになるように努力したが、これらのカメラはセンサーサイズも、レンズの焦点距離も、センサーの画素数もバラバラなので、その点を考慮に入れて判断して欲しい。

比較写真を撮影する時にはマニュアルで調節しながら撮る方法と、全てをカメラに任せてしまう方法とがあるが、今回は全てカメラに任せることにした。なぜならこれが実際の撮影状況に一番近いからだ。もちろんこのやり方には異論があるだろうし、不満を覚える人もいるかもしれないが、申し訳ないけれども、今回は撮り直しをする気はない。人生は短く私にはやるべき事が他にもたくさんある。個人的に私は今回の結果に満足しているので、不満がある方はご自身で比較写真を撮っていただきたい。

今回の比較はそのカメラの性能をしっかり示せたと、私は思っている。いくつかのケースで上手く撮影がいかなかったことがあり、その時は撮影をやり直していることを付け加えておこう。もし私の結果に不満があれば比較写真を送ってほしい。もしそれが私の結果を覆すようなものなら、ここにアップすることを約束する。

ここにあげるDP2 Merrillの画像はシャープネスをかけていない。シャープネスは十分かかっており、それ以上かける必要はないからだ。カメラとSPPのシャープネスのセッティングはどちらも0である。また、いくつかの画像ではシャープネスをマイナスにふった。他のカメラの画像はライトルーム4でシャープネスをかけてある。

SONY RX100


画像をクリックすると拡大します
SIGMA DP2M           Sony RX100


現在発売されてるカメラの中で一番人気、というわけではないにしても、最も人気のあるカメラの一つが2000万画素のRX100だろう。私も他のレビューと同様に、このカメラには絶賛を惜しまなかった。上の写真はピクセル等倍である。RX100はDP2 Merrillと同じ焦点距離に設定して、できるだけ同じ画像になるように撮影している。どちらの画像もSPPとライトルーム4を使って最適な画質に調整している。ホワイトバランスはモザイク画の右目の同じ箇所を指定しており、全体の明るさも等しくなるように調整している。



Leica M9




SIGMA DP2M                  Leica M9


この比較は少し難しかった。私はライカMを35年近くに渡って使用しており、マグニファイヤーを使ってピントを合わせているが、それでもピントを厳密に合わせるのは難しい。このサンプルが他とは違いF8まで絞ってるのはそれが理由である。ほんの些細な違いかもしれないが、F5.6だとフォーカスが合わないことが多いのだ。

もちろん、それ以外にもズミルクスの50mmとDP2 Merrillの45mmという違いがあり、それは実際に撮影する距離を変えることで出来るだけ同じになるようにした。また、ちょうど撮影の時に太陽が建物の真上に来ており、そのせいでフレアが少し出ている。スタジオ以外でテスト撮影をするとこういったことが問題になってくる。それ以外はできる限り露出とホワイトバランスを合わせるように撮影し、M9の画像はシャープをかけてある。

実際に比較してみると、DP2 MerrillはM9にズミクロン50mmを付けたものよりも解像度が高いように思える。あまり大きな違いではないかもしれないが、それでも目で見てはっきりと分かるものだ。このことは、DP2 MerrillがM9の約10分の1の値段で買えるということを考えても特筆に値する。もちろん、M9はレンズ交換式カメラであるのに対し、DP2 Merrillは固定式だし、レンジファインダーでもない。この比較そのものが馬鹿げていると思う人もいるだろう。それでもこういった比較は面白いし意味があると思うので、一緒に楽しんでもらいたい。





SONY NEX7




SIGMA DP2M         SONY NEX-7


NEX7は私の最もお気に入りのカメラの一つである。この10ヶ月で8000枚以上の写真をNEX7で撮ってきた。このNEX7に使われている2400万画素のAPS-Cセンサーは現在いくつかの他のメーカーのカメラで使われており、今後もこのセンサーを採用するカメラは増えていくだろう。

今回使用した30mmマクロはあまり好きなレンズではないが、今回の比較でズームレンズを使いたくはなかったので、これが唯一DP2 Merrillと焦点距離が等しいレンズだった。他のレビューサイトではこのレンズはあまり高く評価されてはいないが、中心の解像度に関して言えば素晴らしい評価を得ている。

他のズームレンズも試しにDP2 Merrillと比較してみたが、私が使用した限りではDP2 Merrillの解像度が最も高かったことは、ここで言及しておきたい。



Fuji X-100



SIGMA DP2M                    Fuji X100



様々な欠点や短所があるにも関わらず、私はX100の画質には満足してきた。これは本当に良いカメラだ。さて、こうやってDP2 Merrillと比較してみたのだが、違いは明らかだ。これ以上のコメントは必要ないだろう。




色の正確性



SIGMA DP2 Merrillマクベスカラーチャート
ホワイトバランスは下段の左から三番目に合わせてある



フォビオンの色の正確性については長い間ずっと議論の対象になってきた。私自身も昨年のSD1のレビューでこの問題を取り上げた。フォビオンの色は上手く表現できないのだが、とにかく独特なのだ。もし、今回のDP2 Merrillでの結果が同じメリル世代のカメラ、SD1 Merrill、DP1 Merrillにも当てはまるなら、それらは同じ傾向を持つだろう。

ISO100とISO200では色の再現はさほど大きな問題にはならないが、ISO400を超えると色が偏り始め、ISO1600では色は滅茶苦茶になる。フォビオンは結局のところ低ISOカメラなのだ。もちろん、今更言うまでもないことかもしれないが。

今回私が気づいたのはシアンに偏る傾向があるということだ。これは比較的容易に修正できるが、注意が必要な場合もある。また、暗部にマゼンタが発生したり、ムラが現れることもある。これらはピクセル等倍にした時に気づく程度のもので、プリントした時にはほとんど問題にはならない。





DP2 Merrillレビュー&RX100、M9、NEX-7、X100との比較(その3)

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ISO400


ISO400 半分にトリミング

ピクセル等倍


ISO100とISO200は素晴らしい画質だ。ISO400はそれより少し劣るが、後処理で必ずノイズリダクションをかけなければならない、というほとではない。ISO400以上になるとかなり画質は怪しくなる。私にとっては、DP2 Merrillは高感度が得意なカメラではない。

暗部も滑らかで、画像を拡大して見たりしない限り、ISO100、200、400ではバンディングノイズもほとんど気にならない。


バッテリー


DP2 Merrillのバッテリーは貧弱だ。だいたいバッテリーひとつで70枚から120枚くらいしか撮れない。バッテリーが持たない原因は二つあって、一つはバッテリーが小さすぎること。もう一つはフォビオンセンサーと二つのプロセッサーの組み合わせが大量の電気を消費することだ。

この問題を解決するにはもっと大きなバッテリーを使うしかないが、ボディは今の時点でかなり大きくなってしまっている。シグマの技術者はおそらく大きなバッテリーを諦めて今のボディサイズを維持したのだろう。その見返りとして、シグマはカメラにバッテリーを二個同包した。私が間違っていなければ、これはデジタルカメラの歴史の中で初の出来事のはずである。

シグマに限らず他のメーカーにも言えることだが、新しいカメラの発売と同時にアクセサリーもすぐに手に入るようになっていないのはとても残念なことだ。この記事の執筆時点では、北アメリカでDP2 Merrill用のBP-41バッテリーを購入することはできない。幸いリコーのDB-65というバッテリーがBP-41と同じらしいが、純正以外の互換バッテリーではケースを削って改造しないと使えないようである。


レンズフード




私は撮影をする時は常にレンズフードを付けている。「常に」だ。せっかく性能の良いレンズを使っておきながら、フレアのせいでコントラストが低くなるのを許容する意味はどこにもないからだ。けれども、バッテリーと同じように、レンズフードも北アメリカで買うことはできなかった。シグマはDP Merrillを出荷するときにレンズフードを一緒に送るのを忘れたに違いない。仕方ないので私はeBayを使って直接日本から買った。


RAW現像


DP2 MerrillはRAW、JPEG、RAW+JPEGのそれぞれの方法で撮影ができる。DP2 Merrillは素人向けのカメラではなく、最高画質を必要とし、それを得るためにどうすればいいかを知っている写真家のためのカメラなので、JPEGで撮影する必要がどれほどあるのか疑問である。

JPEGの画質は十分良いが、DP2 MerrillのRAWはJPEGよりもはるかに優れている。今回の比較では他のプロ用のカメラと同様、私はJPEGを使っていない。JPEGはホワイトバランスが固定されてしまうので、時々ホワイトバランスがおかしくなるDP2 MerrillではJPEGを使いたくはない。RAWならばホワイトバランスをオートにして撮っておけば、あとからいくらでも修正は可能になるからだ。

さらに付け加えると、JPEGはsRGBかAdobeRGBの8bitでしか記録できない。しかしRAWならばそれよりもはるかに広い色域をそのまま記録できるし、色情報を保持したまま、それを16bitのTIFFにして出力することもできる。

DP2 Merrillには専用現像ソフトSIGMA Photo Pro 5.3が付属している。このソフトは他のメーカーが採用しているシルキーピックスほど酷いソフトではないが、動作は鈍く、現像のやり方も特殊だ。SPPには正式なマニュアルは存在せず、ヘルプがあるだけだが、実際にどう使えばいいのかは使っていればすぐに分かる。しかし、SPPでの現像に長い時間をかける意味はあまりないと私は思う。


私のワークフロー


私の行なっているワークフローをここで紹介しよう。まずSDカードからデータをHDD上に移し、SPPを立ちあげて、現像したいファイルを開く。その後少し調整をしたあとProphotoRGBの16bitTIFFに変換する。その後TIFFをLightroom4で開き、その後の現像を行う。

私自身はSPPでは可能な限り画像をいじらない。SPPの全ての機能が、Lightroomよりも、あるいはCaptureOneやApertureよりも劣っていると思うからだ。SPPでどうしてもやらないといけない作業はホワイトバランスの調整だけである。画像によっては多少の調整をする場合もあるが、撮影がしっかり出来ているなら、SPPではホワイトバランスを調整するだけで十分だ。

Adobeが以前フォビオンX3ファイルをサポートしていたように、いつDP2 Merrillをサポートするか気になってる人がいるかもしれない。ここではっきりと明言できないが、Adobeのサポートが可能になるかどうかは全てシグマに責任があると私は考えている。


シャープネス


DP2 Merrillのセンサーが持つ解像力は凄まじい。その性能を最大限に引き出すために、シグマが開発したレンズもまた、恐ろしい解像力を持っている。その二つの組み合わせは素晴らしいもので、小さなボディサイズにもかかわらず、大引き伸ばしにも耐える画像を生み出すことができる。20x24インチ(50x60センチ)にプリントしても素晴らしく滑らかでくっきりとしている。これ以上の大きさのプリントはまだ試していないが、おそらくもっと大きなプリントでも全く問題はないだろう。

カメラとSPPのシャープネスは0のままで撮影を行ったがほとんどの場合はこの設定で適切なシャープがかかっており、問題はなかった。いくつかSPPでシャープネスをマイナスにふる必要があったが、その場合でもLightroomでシャープネスをかける必要は全くなかった。


DP2 Merrillはヘタレ野郎のためのカメラではない


DP2 Merrillはヘタレ野郎が使うべきカメラではない。ヘタレ野郎というのは自分の写真に自信がない連中のことを言う。彼らはたいてい、良いカメラを使っていれば良い写真が撮れると信じてる。そういう奴に限ってやれ構図がどうした、どんな設定でどうやって撮ったかということばかりを気にする。馬鹿馬鹿しいことこの上ない。

本物の写真家は違う。本物は自分が撮りたい写真のためには、どんなカメラが必要なのか、それをわかっているのだ。カメラのスペックを調べたり、他の機種と比較したりすることはただの自慰行為でしかない。大事なことは、実際にカメラを手にして、自分が撮りたい写真のために何が必要なのかを、しっかりとわかることである。

この話は車にたとえるとわかりやすいかもしれない。フェラーリを欲しいと思う人はたくさんいるだろうが、もし毎朝リトルリーグに参加している子供たちを練習場に送り迎えしなければいけないのなら、必要な車はフェラーリではなくミニバンである。

DP2 Merrillに関して言えば、このカメラを使って幸せになれるのは、いくつかある欠点を無視して、画質のポテンシャルを引き出そうとする人である。DP2 Merrillの最高画質を得るためには、迷いやすいAFや、遅い書き込み速度や、使い勝手の悪い現像ソフトや、グラグラ揺れるライブビュー画面に我慢できなければならない。この欠点と引き換えに手に入るのは、3600万画素フルサイズや中判デジタルバックに匹敵する、凄まじい高画質である。これは誇張ではない。実際に私が確かめたことである。

今回のレビューでDP2 MerrillをD800EやPhase One IQ180と比較した画像がないのを不思議に思うかもしれない。これらの高画素数カメラとの比較では、大半の人が予想できると思うが、DP2 Merrillの方が厳しい評価になってしまう。しかし、DP2 Merrillはフルサイズ一眼レフではないし、中判デジタルでもない。その比較を実際に見たら、おそらく多くの人が驚くだろう。

DP2 Merrillは気軽に持ち運べる大きさの、サイズからは信じられない画質を誇る、1500万ピクセルの写真が撮れるカメラである。その解像度はベイヤー2600万画素に匹敵する。操作性はあまり良いとは言いがたいが、それさえ我慢できれば、DP2 Merrillの作り出す画質には、どれだけ口うるさい人であってもそれを黙らせるだけの魅力がある。

シグマはDP2 Merrillでようやく、フォビオンのポテンシャルを最大限まで引き出すことに成功したようだ。このカメラにフォビオンの発明者であるリチャード・ディック・メリルの名を冠するのはふさわしいと言える。おそらくディックは草葉の陰で微笑んでいるに違いない。




僕らは何を撮影すべきか、あるいはSIGMA DP1 Merrillとその広告について(その1)

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by Paul Thacher

Morning Clouds and Grassland 20120702 (c) Paul Thacker 2012


日が沈む頃、高層ビルから窓を開けると、都会のざわめきが遠くに聞こえる。

僕はまどろみの中で雨降りと雷の音を聞いた。ホテルのカーテンの隙間から、青白んだ朝の光がかすかに差し込む。うっすらと目を開けると、ここがいつもの僕の部屋ではないことに気づく。

僕は起き上がり、服を着替える。数分後、僕は古ぼけたミニバンの運転席にいて、曲がりくねる道を駆け上がっていくところだった。

急げ、急げ。早く、早く。オレゴン州モーピン、その町外れにある高台に向かって、急斜面を登っていく。僕がようやく頂上にたどり着き、車を止めると、まさに太陽が水平線から登り始めるところだった。僕がいたのはベイクオーブン発電所の巨大な鉄骨の真下で、発電所から発せられる重低音が体中に響いていた。

それは朝の4時45分で、今まで経験してきた中で、最も誇らしい仕事の始まりだった。SIGMA DP1 Merrill。小さなボディの中に恐るべきポテンシャルを秘めたカメラ。世界展開するその新型カメラの広告のオリジナル写真を、僕は今まさに撮り始めようとしていた。


その6週間前、僕はある連絡を受け取った。それは僕がDP1 Merrillの広告写真の撮影者に選ばれたことを知らせるもので、その詳細は日本の代理店であるgraphica 6+から、後日伝えられることになっていた。僕は彼らと一緒に仕事をするらしい。

これはすごいことになったと、僕は思った。いったい僕は、どんな僻地に飛ばされるのだろうか?フェロー諸島だろうか?それともアイスランド?そういった北方の島々は最近のトレンドだ。僕は航空料金を計算したり、スケジュールを確認したりして、どこでどんな写真を撮ろうかあれこれ頭の中で考えていた。

一週間後、僕は撮影場所が決まったという知らせを受けた。それはスカンジナビア訛りの英語が話される、ロマンティックな氷の世界ではなかった。撮影場所はオレゴンだった。


僕は窓の外を見た。目の前に、僕がこれから写さなきゃならないものが広がっていた。


僕はがっかりしたわけじゃない。ただ、どうすればいいのかわからなかった。そもそも、その広告を見る人たちがオレゴンが何なのか、知ってるのかどうかもわからなかった。世界はひょっとしたら、僕が思ってるよりもずっと狭いのかもしれないけれど。

僕が心配だったのは、この広告のために誰を写せばいいのかということ。その人は力強く、僕らと共通点があって、見る人の感情を引き起こす、思慮深い、気取った部分が何もない、そういう人でなければならない。その人を見ることで、僕らの中にある暖かな記憶、はるか遠くに消えてしまった家族との思い出、そういうものが自然と想起される、そんな人だ。それを撮るのが、僕の仕事だ。いつだって、僕はそういうものを目指してきた。

けれどもその前に、僕は最初の疑問に戻らなければならない。そもそも、オレゴンとは何だ?

もし撮影場所がパリなら、世界中の誰もがあの「パリ」を頭の中に思い浮かべる。「ハバナ」だってそうかもしれない。カリブ海の美しい光、褐色の若いボクサー、そして美女。1962年のキューバ危機より前に、僕らがハバナに抱いていたのは、こういう光景だ。

DP1 Merrillの姉妹機であるDP2 Merrillの広告だってわかりやすい。撮影場所はモロッコだ。あの国特有の色彩、アラビア文字、古くから栄えた交易の街。僕らはそういうものを脳裏に浮かべることができる。

オレゴン州。カリフォルニアの北に位置するこの州は、アメリカの中でも最も視覚的・地理的に変化に富んだ場所だ。太平洋沿岸は、海から見える距離に火山が立ち並び、その麓は降雨量も多くみずみずしい緑が生い茂っている。車で東に二時間ほどで標高4000メートルにも達するカスケード山脈に着く。冬になると絶え間なく雪が降り積もり、山は毎年白く染まる。

カスケード山脈を越えてさらに東に進むと、雨量は急激に減少し、年間降水量25センチ以下の高地にたどり着く。西の山脈よりも標高の高いこの場所は、冬は凍てつくように寒く、夏は猛暑だ。州の北部では絶え間なく猛烈な風が吹いており、世界最大の風力発電所の一つが、ダルズ市のすぐ東のワスコ郡にある。

オレゴンと聞いてこういった情報がすぐに頭に浮かぶ人は、世界にもほとんどいないだろうと僕は思う。日本の代理店もオレゴンについて、はっきりとしたイメージは持っていなかった。日本のシグマ本社はなおさらだろう。

少し調べてみたら、かつて日本で「オレゴンから愛」というテレビドラマが放送されていたことがわかった。両親を交通事故で失った9歳の少年が、親戚の住むオレゴンにやってくるというあらすじだ。彼らの家はカスケード山脈の東、オレゴン州の中央に位置していた。僕がわかったのはこれだけだった。けれども、どんな色彩でオレゴンを撮ればいいのか、その手がかりが掴めただけでも良かった。それは緑ではない。褐色の大地だ。森と海ではない。高原の砂漠と、牧草地だ。

僕が撮影をした場所が、実際にテレビドラマの撮影に使われたのとほとんど同じ場所だったのを知ったのは、撮影が終わったあとだった。


オレゴンではテレビや映画の撮影が多く、映像産業は成長を続けている。ここでは有名な映画俳優や様々な著名人が、カフェでコーヒーを飲んでるのを見かけるのは珍しくない。僕の家とスタジオはポートランド郊外のソービー島にある。聞くところによると映画監督のガス・ヴァン・サントが島の反対側に住んでいるらしいんだけど、僕は今まで彼からコーヒーに誘われたことは一度もない。

オレゴンには撮影場所を提供する会社や、どこでどんな景色が撮れるのか案内するウェブサイトや目録まであり、それが一つの産業となっている。僕はそれらを一応確認してみたが、少し寒気がした。有名なテレビタレントは特定のアングルからだけ綺麗に見えるようなもので、他のエンターテイメントと同じく、そういう場所には見せかけのものしか存在しないのだ。僕が探しているものは、ここにはないのだろう。

別の場所を探している時に、トラベルオレゴンに勤めている友人のカレン・バイフーバーから、とある女性の話を聞いた。カレンがその女性と出会ったのは、5年前に地元のホテルで開かれたとある会議でのことで、彼女の名前だけではなく、どこに住んでいて何をしているのかまで覚えているという。そんな昔のことを覚えているということは、カレンが人並み外れた記憶力を持っているのでなければ、その女性が特別な何かを持っているということなのだろう。

ジェニー・カーヴァー。彼女と夫のダン、そして他の4人はインペリアル・ストック・ランチを運営している。130平方キロメートルにもなる高地の牧草地に麦を植え、コロンビア種の牧羊と牧牛を飼育している。僕が最初にジェニーと電話で話をした時から、ここが僕の撮影場所になると確信していた。




心からあふれる誠実さというものは、現代社会の中からほとんど消えさってしまった。例えば、スコセッシの映画を見るときに、僕はかすかに困惑を感じる。それは、誠実に生きることを適度に行うことで、人生における何か大事なものを作り上げることができるというものだ。あたかもタンパク質が体を作るのに必須であるように。

けれども、もちろんそれは真実ではない。映画というのは結局のところ、それぞれの人の心のなかにある何か美しいものを、お金に交換する装置なのだ。エンターテイメントは時として、それそのものが残酷で暴力的なものになる。そしていつだって、スクリーンの裏側では貨幣が飛び交っている。僕らはお金を払い、誠実であることの大事さを知る。これほど悲しい交換があるだろうか。

僕がこれまでやってきた仕事の中で必ず追求してきたものは、自分の目の前にある現象から立ち上がる、何か感情を揺さぶるものを捉えることだ。去年のことだが、僕は友人のアートディレクターの肖像写真を撮影した。彼は生まれ育ったスコットランドの訛りで、カメラを指差して言った。「こういうものは嘘をつかないんだよ」


Patrick McMahon 20110508 (c) Paul Thacker 2011


上の写真がその時撮った三枚のうちの一つだ。撮影が終わると彼はすぐにどこかに行ってしまった。まるで初秋の早朝の白い息が、瞬く間に消えてしまったかのように。僕が彼と一緒にいたのは、本当に短い時間だった。その、ごく僅かな時間に、僕らの間で何かが交わされた。何かと何かが触れあった。人と人との間で。いきものといきものとの間で。

こういった交換がもっとも良く現れている作品の一つにセバスチャン・サルガドの作品がある。彼の作品からは常に愛情が溢れ出ており、作家の自尊心といったものが、画面から完全に消えさっている。





僕らは何を撮影すべきか、あるいはSIGMA DP1 Merrillとその広告について(その2)

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ベイクオーブン発電所で1時間ほど撮影をしたあと、僕は高台を下ってインペリアルホテルの自室に戻った。僕は顔を洗い、歯を磨き、これから一緒に仕事をする、東京の代理店graphica 6+の福井信蔵氏と奥いずみ氏と面会した。それは朝の6時で、僕らは朝食をとりながら、軽いミーティングを行った。

埃っぽい未舗装の道路を走りぬけ、インペリアル・ストック・ランチの本部がある建物に到着したのは7時15分のことだった。納屋と家屋敷のすぐそばにフェンスがあり、それに沿って車を停めようとしていると、ブリキのバケツを左手に持ったジェニー・カーヴァーが納屋から出てきた。彼女の右隣にはケイティーという名前の白黒のボーダーコリーがぴったりとくっついていた。

Jeanne Carver 20120702 (c) Paul Thacker 2012


ジェニーは美しい女性だ。その日の彼女は破れたブルージーンズと、白と青のストライプ模様のフランネルジャケットを着て、茶色のカウボーイブーツを履いていた。ブロンドの髪はピンで上の方にまとめられ、ほつれた髪が肩に降りかかっていた。

知性を感じさせる灰色の目をきらめかせながら、ジェニーは少しの不安と興奮の入り混じった表情で、僕らに挨拶をした。そして、自分たちが自己紹介を始めると、彼女はもう、てきぱきと作業の続きに取り掛かっていた。農場で生活をした人ならわかると思うが、農家の朝はやるべきことが星の数ほどある。日々の仕事。予想外の出来事。その日は、それらに加えて日本から来た代理店が、全世界に展開する広告のための撮影に来ているのだ。




都会を離れることは素晴らしい経験だ。大陸の奥深くに入り込み、現代の生活に必要なあらゆるものから距離を取る。そこでは不必要なものは消え去り、必要だと思っていたものが実は必要ではなかったことに気づく。そうやって離れることそれ自体に治療効果があるのだ。携帯電話は繋がらなくなり、インターネットやRSSフィード、ソーシャルメディア、そういったものが徐々に記憶の彼方へと消えていき、僕らはついに自分自身になる。

農場での滞在は、まさにそういう感じだった。僕らは農家の一員になっていた。普段の生活で気がかりだったことは全て、広大な農場の静寂と孤独に埋めつくされてしまった。農場の生活はまるで自分たちがここにいないかのように進む。僕ら部外者三人は、皆同じ体験をした。風化した古い建物、大地、風、太陽、空気、森、木々のざわめき、子羊の鳴き声、どこまでも続く地平線、朝の冷たい空気、夕刻の満月、人がいることの優しさ、本当の笑顔、手作りサイダーの熱気、新しい友だちとの談笑、そこにいるということの奇跡、言葉に表すことのできない、数え切れない体験。そのすべてが、僕らの心に突き刺さった。それはまるで、凍てつく冬の夜に暖炉のそばに集まって、かすかに残る暖かさを噛み締めるような、心に染みる体験だった。


どうして、そういう経験が大事なのか。


全ては、誠実であるために。


僕はシグマの山木和人氏とここ数年一緒に仕事をしてきた。その経験から、シグマが本当にやりたいことは何なのか、シグマがプロ用のカメラやレンズを作り続けるモチベーションはどこから来るのか、僕にもわかってきた。

今回の撮影でDP1 Merrillを使って、このカメラについていくつかのことがわかった。レンズの性能、画質、色彩、コントラスト、使い勝手。このカメラに秘密は何もない。けれども、そもそもの初めに、多くの人が忘れがちになるとても重要なことを、僕は認識していた。それは、このカメラについて深く知ろうと、最初から決めていたということだ。

創造力。シグマが僕に求めてきたことは、広告に使われる写真を通じて、世界中の人とコミュニケーションをとるということ。それが、僕のやるべきことだった。

世界中の人が持つ、何かを創り出したいという欲求。それを形にするのが、世界最高クラスのレンズと、通過してきた光をあますところなく捉えるセンサーだ。写真家たちはこのカメラを持って世界とつながろうとする。僕はその具体的な例を示すことで、このカメラの性格を決定づける役割を持つ。

僕たちは眼の前に広がる光景と関わろうとする。自分の内側から湧き出る、言葉に出来ない欲求を、写真という形にする。世界と誠実に向き合い、その本当の姿を捉えようとする。それが、僕らが駆使する、創造する力だ。

シグマのカメラは気軽に写真を撮りたい人には向かないと言われている。もしくは、使うのが少し難しいとも。馬鹿馬鹿しい。

もしそこに難しいものがあるとしたらそれは、やましい心を持たずに世界と向き合うことの難しさと、苦痛だと思う。このカメラは全てを写す。だから、写るのは被写体だけじゃない、それを撮影している僕の心まで写し撮られてしまう。

僕がこれまでやってきたこと、あるいは今回やろうとしたことはそういうことだ。深く、深く写すということ。それが、シグマという会社が本当にやろうとしていること。フォビオンセンサーを使って全てを写し撮ろうとすることほど、難しいことはない。結局僕らの写真というものは、自分が今まで体験してきたことと向き合うということだから。それを全て写しとる。それが簡単な作業であるはずがない。

なぜ僕はジェニー・カーヴァーとインペリアル・ストック・ランチの人々を選んだのか。なぜ僕は、映画会社が用意した撮影場所を見て寒気を感じたのか。

僕が没頭できる対象、「愛情」という言葉で表される何か、それがあそこにはあったからだ。


何を写すべきなのか。それは結局、いつも同じことなんだ。




フォトキナ2012 山木社長のプレゼンテーション(その1)

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司会者
「紳士淑女の皆様、私はシグマドイツのマルコ・ハーンです。本日はフォトキナ2012にお集まりいただきましてありがとうございます。今日はシグマCEOの山木和人から皆様にお伝えしたいことがあります。

私はここで二年に一度皆様とお会いするのですが、タイムスリップをしたような感覚に襲われます。フォトキナは私たちドイツ人にとってとても大きなイベントです。私たちは今日のために1年前から準備をしてきました。それがあと数時間で開幕するのです。

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前回のフォトキナはシグマドイツにとって忘れられないものでした。今回と同じ場所に素晴らしいブースを作り、7メートルの巨大スクリーンを使ってSD1の発表を行うことができました。

本日はこれからシグマCEOの山木和人がシグマの未来について、皆様にお話をいたします。今夜はおそらく、シグマの新時代の幕開けとなることでしょう。この場を借りて日本のシグマのスタッフと、シグマドイツのスタッフに感謝の言葉を述べたいと思います。シグマドイツのスタッフはこのイベントのために大変な努力をしてきました。何人かのスタッフは今現在疲れきっていると思いますが、明日の開幕をスタッフ全員が楽しみにしています。

今夜お集まりいただいた皆様にはフォトキナと、ドイツのもてなしと、たくさんのノンアルコールビールを楽しんでいただきたいと思います(笑い)。

それではシグマCEOの山木和人に交代させていただきます。ありがとうございました」

山木「(マイクスタンドが高すぎるのを低くして)これが日本人用のサイズです(笑い)。

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紳士淑女の皆様、今晩はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。フォトキナの期間は皆様も大変お忙しいと思いますので、来ていただきましてとても感謝しています。

私たちはこのフォトキナに向けて毎年新しい製品を紹介してきました。しかし、その話をする前に、少しお伝えしたいことがあります。

シグマの創業者であり、初代CEOの山木道広は今年の1月18日に日本の東京で逝去いたしました。

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彼は多くの人と知り合い、優れた経営手腕を発揮し、たくさんの事業を手がけてきました。生前の山木をご存知の方々には、そのご厚誼に対し心からの感謝を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

山木をご存じない方々もおられると思いますので、この場をお借りしまして、シグマ社の歴史を簡単にご紹介させていただきたいと思います。

山木道広は1956年に大学を卒業しました。在学中から家族を養うために、いくつかのレンズメーカーで働いていました。彼は卒業後小さなレンズメーカーに就職したのですが、それまでの経験が買われ、すぐに会社の重役の一人になりました。若年にもかかわらず、彼の知識と経験は抜きん出ていました。

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残念ながら、この小さなレンズメーカーは数年後に倒産してしまいました。彼はコンサルタントとして、供給会社を助けるようになり、多くの組立会社を供給会社に紹介しました。この事業は最初はとてもうまくいきましたが、長続きはしませんでした。次第に供給会社は彼自身の会社を作るよう頼むようになりました。そして1961年、山木道広はシグマ研究所を設立しました。

彼が会社を作ったのは自分のためではなく、供給会社を助けるためでした。彼は生前こう言っていました。『付き合いのあった会社を助けるために作ったシグマがこんな50年も続く会社になるとは、想像もしていなかった』と。

会社が最初に作った製品の一つがリアコンバーターレンズです。このレンズ登場以前は、フロントコンバージョンレンズしか世の中に存在していませんでした。リアコンバージョンレンズはレンズとマウントの間に挟むことができるので、レンズのフィルターサイズにかかわらず、どんなレンズにも使うことができました。

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もう一つは、一つのマウントから別のマウントに変更できるレンズマウントシステムです。シグマはこれをYSマウントと呼びました。これはヤマキ・システムを略したものです(笑い)。

残念ながら、山木はこれらの製品の特許を取るのを忘れていました(笑い)。彼はこれらの製品で大きな利益をあげることはできず、製品のアイデアも他のメーカーに次々と真似されてしまいました。彼の考案した製品は世界中にあっという間に広まりました。これは、山木にとって一番最初にカメラ産業に貢献した出来事でした(笑い)。

今から約一年前の2011年9月13日、シグマの創立50周年記念パーティーが開かれました。しかし、その3ヶ月前、彼の肝臓にがんが発見され、闘病のためにたくさんのエネルギーと体重を失いました。正直に言うと、私は彼にパーティーに参加するのをやめるようアドバイスしましたが、彼は聞き入れませんでした。

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パーティー中の彼の表情を見るととても幸せそうです。今では私も彼がこのパーティーに参加してよかったと思っています。ここでもう一度、このパーティーに参加された方に対して感謝の言葉を述べさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

彼は私の父であり、そして師でもありました。私は彼から多くのことを学び、多くの刺激を受けてきました。偉大な経営者である彼の情熱をプライベートで、あるいは仕事を通じて間近で見ることが出来たのは、とても幸運だったと思います。

現在のシグマCEOとして、私がやるべきことは彼の目指したものをこれからも継続していくということです。

カメラは彼の目指したものの一つです。ここで簡潔に最近のシグマのカメラ事業について紹介したいと思います。

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今年の7月に、革新的な4600万画素の高級コンパクトカメラDP2 Merrillを日本で出荷し始めました。このカメラは日本の写真愛好家にとても好意的に受け止められ、最初の出荷はすぐに店頭からなくなってしまいました。あまりに熱狂的に受け入れられたので、7月から8月にかけて大変品不足の状態が続きました。また、出荷後にユーザーの皆様から受けた反応はとても良いものでした。

先週から日本で広角バージョンのDP1 Merrillの出荷を始めました。市場の反応はとても良く、最初の出荷はほとんどユーザーの手に渡ったようです。今後も世界各地に出荷していきますので、なるべく早く世界中の写真愛好家の手に渡るよう努力していきます。

さて、ここで新製品の紹介をしたいと思います。詳細に移る前に、まず現在のデジタル一眼レフと交換レンズ市場について概要を確認したいと思います。

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2012年はデジタル一眼レフとミラーレスカメラに大きな変革のあった年でした。おそらく皆さまの多くが納得していただけると思います。とても解像度の高いカメラが続々と登場しました。私たちのSD1もこの中の一つです。また、基本性能のとても高いカメラや、高画質なミラーレスカメラも数多く発売されました。

しかし、レンズはどうでしょうか?

私たちからすると、レンズにはボディほど大きな変革が起こっていないように見えます。いくつかのレンズは旧態依然としたままで、より高い性能を求めるユーザーの欲求に応えることができていません。もちろん、良いレンズも中にはありますが、それぞれの写真愛好家にとってベストのレンズを見つけることはとても難しくなっています。

『良い写真は、良いレンズでのみ撮ることができる』

これが私たちの考えです。

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世界一のレンズ製造会社として、私たちには良いレンズを作らなければならないという責任があると思っています。そして、世界中の写真愛好家のために、何が良いレンズなのかをわかりやすく伝え、レンズを選ぶ手助けをする必要があると考えます。

私たちはこの問題について深く考えました。

そして、最高のレンズをお届けするために、次の三つの課題に取り組む必要があると結論付けました。

・最高の設計

・最高の品質管理

・最高の製造

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まず、最高の設計についてお話したいと思います。

最高の設計をするにはまず、才能があり、経験豊かなエンジニアが必要です。シグマには既に才能と経験を持つエンジニアがたくさんいます。

次に明確な製品のコンセプトが必要です。明確なコンセプトのない製品が多くの人に届くことはありません。多くの人に届かない製品というのは往々にして、欠点はないけれど特に長所もない、ということが多いのです。

それゆえ、私たちは既存のすべての交換レンズを、3つのラインに再編することにしました。

今からこの3つのラインについて説明したいと思います。





フォトキナ2012 山木社長のプレゼンテーション(その2)

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3つのラインはそれぞれ明確なコンセプトを持ち、今後発売する全てのレンズは3つのラインのどれかに属することになります。

最初のラインは『コンテンポラリー』です。

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コンテンポラリーラインは最新の技術を使い、高画質と小さなサイズを両立しています。このラインのレンズは多目的で、ユーザーの様々な要望に応えることができます。

コンテンポラリーラインのレンズは以下のシチュエーションに使われることを想定しています。

・旅行
・家族写真
・スナップ
・その他の様々なシチュエーション

二つ目のラインは『アート』です。

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アートラインは最高の画質と光学性能を追求しています。最高の性能と芸術的表現を求める人のためのレンズです。次のような状況を想定しています。

・風景
・ポートレート
・静物
・マクロ
・スナップ

最後のラインは『スポーツ』です。

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スポーツラインは高い光学性能と、高度な動体捕捉能力を備えています。

・野生生物
・野鳥
・スポーツ
・モータースポーツ
・航空機

スポーツラインは以上のような被写体を補足するのに高い性能を発揮します。

私たちは3つのライン、コンテンポラリー、アート、スポーツを示すことで、被写体や撮影のあり方を押し付けているわけではありません。このラインを示すことで、レンズを設計するときに、考え方をはっきりさせることが目的です。

今回のフォトキナで、それぞれのカテゴリーごとに1つずつ、新しいレンズを紹介していきたいと思います。

コンテンポラリーラインからは17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSMを発表します。

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このレンズには最新の技術をふんだんに使用しています。そのことによって、高い画質を維持しながら、大幅にサイズを縮小することに成功しました。

これが現行のレンズと、最新のレンズとの大きさの比較です。最新の技術を使うことで従来比で30%のサイズ縮小に成功しました。これはとても大きな達成で、私たちのエンジニアは素晴らしい仕事をしてくれました。とても満足しています。

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このレンズは発売までにもう少し時間がかかります。発売予定は2013年の初頭で価格は未定です。

アートラインからは35mm F1.4 DG HSMを発表します。

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このレンズはコンセプト通り、ひたすらに画質を追求し、最高の光学性能を達成すると同時に、高いレベルでの芸術的表現が可能になっています。

MTFチャートはこのクラスのレンズの中では最高の数値を示しています。それに加えて、このレンズは軸上色収差を極限まで減らすことを目的としました。

軸上色収差はフォーカス面の前後に現れる色収差です。皆さんは画面周辺で色収差が起こっているのをよく目にしたことがあると思いますが、それは倍率色収差と呼ばれる収差です。

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これはとあるメーカーの35mm F1.4レンズのサンプル写真です。お分かりいただけるように、フォーカス面の前方にはマジェンタの、後方には緑の収差が発生しています。これが典型的な軸上色収差です。

正直に言うと、このレンズはとても良いレンズです。私がここで強調したいのはF1.4といった大口径レンズでは、色収差があるというのは問題でも何でもなく、当たり前のことだということです。

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公平を期すために、同じサンプルを私たちの50mm F1.4レンズで撮影しました。ご覧いただけますように、同じような軸上色収差が発生しています。私たちの85mm F1.4でも撮影しましたが結果は同じです。

つまり、大口径レンズには軸上色収差がつきものなのです。しかし、私たちは新しい35mm F1.4ではこれを減らしたいと思いました。これがサンプル写真です。

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ご覧のように、35mm F1.4レンズでは高いMTFレベルを維持しながら、軸上色収差を低減しています。このことによって、ピント面からフォーカスが離れていく時に、極めてスムーズでクリアな画像を撮ることが可能になります。私はこの達成にとても興奮しています。

35mm F1.4 DG HSMは2012年の11月に発売します。値段については今考え中で、いいアイデアがある方はぜひ教えていただきたいと思います。あまり安すぎる価格にはできないのですが(笑い)。

スポーツラインからは120-300mm F2.8 DG OS HSMレンズを発表いたします。

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このレンズの光学設計は、現行のレンズと同じです。しかし、機械部分、電子部品、ファームウェアなどを最新のものに変更し、新しいコンセプトに合うように作り直しました。

例えば、このレンズは防塵防滴構造を持ち、設定をカスタマイズする事が可能です。このカスタマイズについてはあとで詳細を述べたいと思います。

このレンズの発売は2013年の初頭を予定しています。価格は未定です。

この3つの新製品に加えて、レンズをカスタマイズするためのソフト『SIGMA Optimization Pro』をここで発表させていただきたいと思います。

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このソフトを使うことで、ユーザ-はレンズをカスタマイズすることが可能になります。ここでいくつかの機能をご紹介したいと思います。

まずはピント調節機能です。

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この機能は、カメラボディに付いているピント調節機能ととても良く似ています。ボディの調節機能では焦点距離に関わらず、最近接から無限遠までのフォーカス範囲の中から、一点を選ぶことしか出来ません。

しかし、このソフトを使えば、焦点距離ごとに最適な一点を指定することができます。これは今までよりも洗練された機能で、これによってユーザーは各レンズを最適化し、自分の使用目的により合うレンズにカスタマイズすることができます。

もう一つの機能はフォーカスリミッターのカスタマイズです。

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私たちの新しい120-300mmレンズにはフォーカスリミッターが付いています。しかし、ユーザーの使用方法によって、それぞれ求めるリミッターの範囲が異なると思います。

例えば航空機を撮影する場合、リミッターの範囲は無限遠からごくわずかに離れた範囲に限定したいでしょう。それがこのソフトでは可能になります。つまり、このソフトによってユーザーが出来る範囲が広がるのです。

また、このソフトを使えばユーザーはAFスピードを変更することができます。

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例えばスポーツラインのレンズの場合、滑らかなフォーカスよりもフォーカス速度を優先したいユーザーは多いと思います。レンズ製造会社として、私たちはいつもフォーカス速度と滑らかなフォーカスのどちらに重点を置くべきか悩んでいました。

それゆえ、フォーカス速度を何よりも優先するユーザーのために、このオプションを用意しました。

もちろん、ファームウェアのアップデートもできます。新しいファームウェアが出たらユーザーは簡単にアップデートすることができるようになります。

このソフトは2013年の初頭に公開され、私たちのHPから無料でダウンロードできます。

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レンズのチップとパソコンをつなげるために、私たちはUSBドックを用意しました。これも2013年の初頭にソフトの公開と同時に発売されます。値段はまだ未定です。

以上が私たちがフォトキナで発表する新製品です。


さて、より良いレンズを生産するために、私たちは最高の品質管理体制を整えました。

本日発表するのは、従来のものとは全く違う、新開発のMTF検査装置です。私たちはこれを『A1』と呼んでいます。

A1は4600万画素のフォビオンセンサーを使用しています。

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この素晴らしく解像度の高いセンサーを使用することで、私たちはこれまでよりも高い空間周波数を測定・検査することができます。空間周波数はレンズの解像度を示します。この新しいMTF検査装置によって、最高レベルの解像度を測定することが可能になりました。

私たちの目的は、工場から出荷される全てのレンズが設計通りの高い品質を持つようにすることです。今後出荷されるレンズは全て、この新しい検査装置によってチェックされます。これからは品質の良いレンズだけを出荷することができるよう、検査体制を整えました。


最後にご案内したいのは、最高の製造現場です。

シグマのレンズは全て、小さな部品から金型まで、レンズ生産に最適化された製造ラインのもと、全て日本で生産を行なっています。

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現在では日本だけで生産を行う企業はごくわずかとなってしまいました。

私たちの企業風土は工場のある会津の風土に大きな影響を受けています。綺麗な空気、清浄な水、熱心で勤勉な人々。私たちの製品は世界中のプロ写真家や写真愛好家に受け入れられています。それは私たちの製品が本物の職人たちによって作られているからだと自負しています。

ここで、私たちの会津工場を紹介する短いビデオをご覧いただきたいと思います。私たちの真摯な態度、熟練の技、そして製造に対する情熱を紹介したいと思います。




(万雷の拍手)

ありがとうございます。本当に、ありがとうございます。

彼らが私たちの製品を作っている人たちです。私は彼らを誇りに思います。


さて、これで私の発表を終わらせていただきます。私たちの考えや新製品の詳細は新しいウェブサイトsigma-global.comで見ることができます。今回お話させていただいた新しいビジョンが詳しく書かれています。ぜひご覧ください。

また、私たちのユーザーに感謝の心と、私たちの哲学を伝えるために、私たちがコンセプトブックと呼ぶ写真集を用意しました。この本では私たちの新製品と工場を紹介しています。ご退出の折にはぜひとも手にとってご覧いただきたく思います。私たちの写真に対する取り組みをより深く知ることができると思います。

また、レンズのバヨネットと同じ真鍮で出来た、ペーパーウェイトを用意しました。バヨネットにアルミを使っている会社がいくつかありますが、バヨネットはとても大事な部品ですので、私たちは今でも真鍮で作ることにこだわっています。このペーパーウェイトは少し重いですが、ぜひともお持ち帰りください(笑い)。

ここに今回発表したレンズを、まだプロトタイプですが用意していますので、発表が終わったらぜひともお手にとって試してください。

本日はお集まりいただきまして大変ありがとうございました」




シグマCEO山木和人インタビュー(Photokina 2012)(その1)

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Imaging Resourceのデイブ・エッチェルズは2012年のフォトキナでのシグマの発表に興奮を隠しきれなかった。カメラ産業における初めての試みがいくつも発表されたからだ。

今回のインタビューでは新製品の紹介に加えて、レンズ生産と品質管理における革新的なシグマのアプローチをお伝えしたい。シグマCEOの山木氏とデイブ・エッチェルズがシグマの発表と会社の将来について話し合った。

デイブ「まずは経済状況について確認したいと思います。前回のCESでのインタビューから何か変わったことはありますか?ヨーロッパの経済状況はどうでしょうか?また、前回アメリカの市場は良くなっているとお話されていましたが、それはまだ続いているのでしょうか?」

山木「状況はあまり変わっていないと思いますね。アメリカは上向いていますが、ヨーロッパは変わらず厳しいです」

デイブ「ミラーレスでは次々と革新的なカメラが発表されています。シグマがミラーレスカメラに向けてもレンズを作り始めたのは素晴らしいと思います。それに関連して、少し前にシグマチャイナの関係者がシグマは独自のミラーレスを作る計画はないと発言し、話題になりました。これは確かなことなのでしょうか?」

山木「今のところ、私たちがミラーレスカメラを作る計画はありません。現在のSDとDPのユーザーをサポートするのを最優先にしているからです。私たちは既存のユーザーをまず大事にしなければいけません。もちろんシグマは未来永劫ミラーレスを作らないというわけではありませんが、今の時点では全く計画はありませんね」

デイブ「SD1は大幅に値下げをしましたが、売り上げはどうなりましたか?」

山木「とても好評をいただいています。ユーザーの中には以前の価格では買えないという方が多かったので、値下げ後はよく売れていますね。また、最初のSD1の価格で買っていただいたユーザーにはサポートプログラムを用意しました。これは4,000ドル相当のポイントをお渡しすることで、値下げによる価格のギャップを埋めることが目的です。このポイントで私たちの製品を多く買っていただいてます」

デイブ「それはとても素晴らしい解決法ですね。SD1発売直後のシグマは厳しい状況にあったと思いますが、見事にそれを切り抜けたと思いますし、ユーザーのサポートも素晴らしいです。さて、単焦点コンパクトのDPシリーズはどうでしょうか?他の大型センサー搭載のコンパクトカメラと比較してもとても競争力の高い値付けだと思いますが」

山木「DPシリーズは日本の写真愛好家の間では熱狂的に歓迎されています。非常によく売れていますね。今はアメリカでも売り上げが伸びてきています。DPは簡単に高画質の写真が撮れるので、ユーザーは性能に満足されていますね。ミラーがないので振動の悪影響を受けないですし、フォーカルプレーンシャッターではなくレンズシャッターを使っているので、音もとても静かです。DPでは気軽に手に持って高画質な写真を撮れるのです。私たちは出荷前に全てのDPをチェックして、センサー面とレンズ面を水平になるように調節しています。なので、理論上撮れる最高画質が全てのDPで得ることができます」

デイブ「レンズの話に移りましょう。これまであったEXとそれ以外というカテゴリーが、コンテンポラリー、アート、スポーツの3つのカテゴリーに再編されました。この変更の意図は何なのでしょうか?」



山木「まずEXというブランドについてですが、これは数年前まではとても上手くいっていました。しかし、ここ数年はカメラの進化する速度が早く、毎年のように一眼レフやミラーレスの画素数が増え、解像度が上がっています。それゆえ、私たちが作るレンズもそれに合わせて、新しくなるごとに過去のモデルより高性能になっていきました。その結果、いくつかの非EXレンズが旧型のEXレンズより高性能になるという逆転現象が起こってしまったのです。

このままではユーザーの方々が混乱してしまうだろうと考え、それを解消しようと思いました。EXというカテゴリーの代わりにレンズ設計に対する考え方をはっきりさせることが大事だと考えたのです。

私自身エンジニアのそばにいつもいて設計を間近で見ていますが、製品開発というのはいつもトレードオフの関係にあります。最高の性能、最高の画質、小さなボディ・・・全てを達成した完璧なレンズというのはこの世には存在しません。それゆえ、どこの部分を優先するかを決めなければいけないのです。もし、画質や性能を優先したらサイズと重さはどうしても増えてしまい、大きなレンズになってしまいます。もしサイズを優先したら歪曲や口径食がある程度発生するのは避けられません。

今回の新しいラインを示すことで、私たちが設計時点で考えるレンズのコンセプトが明確になることを期待しています。私たちは撮影対象を限定するつもりは全くありません。そうではなく、これがどういう製品なのかということをはっきりさせたいのです」

デイブ「つまり、ユーザーにどのようなトレードオフが存在するのか、明らかにしたいと考えているのでしょうか?」

山木「はい。それとレンズのコンセプトもですね。今年はカメラボディの面で大きな革新がいくつもあった年だったと思います。信じられないくらい解像度の高いカメラ、画素数は少なくても性能の極めて高いカメラ、さらに非常にコンパクトなカメラなどです。

2012年はカメラの多様化が始まった年だと思います。去年までは全てのカメラが画素数を増やし、さらに動作速度も向上させるというベクトルで進んでいました。しかし、今はそういった完璧なカメラは不可能だという認識が広まっています。当然のことですが、ピクセル数が増えれば画像を処理し、データを記録するのに時間がかかります。

この傾向は来年以降も強まっていくと思います。しかし、レンズに関してはこのような多様化に対応できていません。私たちは新しいラインを示すことで、多様化するカメラにふさわしいレンズを作っていきたいと思います」

デイブ「新しいラインには、発売済みのレンズも再編されるのでしょうか?それともこれから発売する新しいレンズだけなのでしょうか?」

山木「新しいレンズだけですね」

デイブ「スポーツラインのレンズは動きの速い被写体だけを対象にしているのでしょうか?それとももっと広い範囲の、様々な被写体を撮れるのでしょうか?」

山木「もう一度念を押させて欲しいのですが、それぞれのレンズの使い方を強制しているのではありません。スポーツラインというのは私たちが設計する時のコンセプトを明確に示すためのものです。もちろん、そのレンズを使ってポートレートなどの写真を撮ることはできます。しかし、私たちはユーザーがスポーツや野生生物や航空機などを撮ることを想定して設計をしています。

スポーツや野鳥を撮るために、スポーツラインのレンズは全て防塵防滴構造になります。また、このラインには様々なカスタマイズ機能を持たせています。例えばユーザーはフォーカスリミットの範囲を調整できます。航空機などを撮影するときは無限遠に近い範囲で限定した方がいいのですが、それを実際に設定できるのです。

もちろん、レンズ製造会社として、私たちはたくさんのユーザーのニーズに応えなければいけません。それなので、多くの人が使うだろうセッティングをデフォルトとして用意しています。それだけでは物足りないというユーザーのためにセッティングの幅を残すことで、できるだけ多くのユーザーのニーズに応えられると思っています」

デイブ「ということは、このフォーカスリミットは完全に電子制御なのでしょうか?以前のシグマのレンズにはマクロ領域のフォーカスをロックして物理的に動かないようにするスイッチがありましたよね?今後は全て電子的に動作するのでしょうか?」

山木「フォーカスリミットのスイッチはありますが、制御はすべて電子的に行なっています」

デイブ「ということは、フォーカスリミットのオンオフを設定するスイッチがあり、さらにカスタマイズしたセッティングで撮影ができると」

山木「新しいレンズについているフォーカスリミットスイッチはデフォルトのオンオフを制御します。それに加えてもう一つカスタムスイッチというものがあります。カスタムスイッチをオンにすることでカスタムモードに移行して、USBドックを使って変更した設定が使えるようになります。カスタムスイッチをオフにすればレンズはまたデフォルトの設定に戻りますので、実際の撮影現場でどちらかを選ぶことができます」

デイブ「例えば航空機を撮影しに行って、そのあとで他のものも撮りたいと思った時にデフォルトに戻せるということでしょうか。つまり、フォーカスリミットがなしのモード、デフォルトのフォーカスリミット、さらにカスタムフォーカスリミットの3つを選べると」

山木「そうです」

デイブ「これは、カメラの歴史の中で初の試みですね。最初のスポーツラインの120-300mm F2.8 DG OS HSMは高性能なだけではなく、防塵防滴構造を持っています。今後のスポーツラインのレンズも全て同じような高性能の防塵防滴レンズになるということですね。



さて、コンテンポラリーラインからは17-70mm F2.8-4 DC OS Macroが発表されました。これは同じスペックの三代目になりますが、より軽量で小型になっています。どうやってこれを達成できたのでしょうか?」

山木「いろいろな技術を使っていますが、私たちがTSC(熱耐性複合材)と呼ぶ新しい素材を使ったのが一番大きいですね。これでかなり小型化できました。もちろんレンズ構成も見直しています」

デイブ「つまり前のモデルと比べてレンズ構成が変わり、作りも変更していると」

山木「そうです。このレンズは最初の段階から光学部門と機械部門のエンジニアが協力して小型化のために尽力してきました」








シグマCEO山木和人インタビュー(Photokina 2012)(その2)

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デイブ「先ほどフォーカスリミットに絡んでUSBドックの話が出ましたが、これはボディに合わせてフォーカスの位置を前後に合わせるピント調節機能も持っているのですね」

山木「そうですね、カメラボディに付いているピント調節機能と基本的には同じです。しかし、ボディの調節機能は撮影距離全部に対してピント位置を調節することしか出来ません。例えば無限遠でピントを合わせると3mの距離ではピントが合わなくなったり、逆に近距離で合わせると無限遠が合わなくなることがあります。フォーカス位置というのは被写体の距離に合わせて真っ直ぐ比例して変わっていくわけではないのです。このソフトを使えば特定の距離におけるそれぞれのピント位置を個別に指定することが可能になります」




デイブ「つまり、撮影距離に応じて、直線ではなくカーブ状にピント位置を設定できるということですか?」

山木「そうです。さらにズームレンズの場合、焦点距離ごとにピント位置の調整ができます」

デイブ「焦点距離ごとに!すごいですね」

山木「ピントを合わせるためには何度も試して確認しなければいけないので、使いこなすのはとても難しいです。カメラボディの調節機能でさえ、ちゃんと合わせるのは大変です。けれども、ユーザーのためにこの機能を提供することにしました」

デイブ「確かにピント調節機能は何度も試さないといけないし、どれだけ変更すればいいか決めるのは大変ですね。この機能はシグマのレンズ全てに使えるのでしょうか?」

山木「新しいレンズだけですね」

デイブ「つまり今回発表になった3つのレンズと、今後発売されるレンズ全てということですね」

山木「そうです。また、レンズごとにカスタマイズ出来る範囲は異なります。スポーツラインのレンズはより多くの機能をカスタマイズできます。ピント調節機能は全てのレンズに付きますが、フォーカスリミットはそもそもスイッチを持たないレンズもあるので、レンズごとにできることは変わりますね」

デイブ「私はある意味測定オタクなのですが、新しいA1検査装置にはとても興味があります。個人的に今回のフォトキナでもっとも興奮したのがA1の発表でした。記者発表によるとこれから発売するレンズは全て100%この新しい装置で検査されるのでしょうか?」

山木「そうです。今回の新しいレンズからですね。実は現在でも私たちは出荷前に全てのレンズを自社製のMTF検査装置でチェックしているのですよ。この装置を使って画像を撮影し、データを分析してMTF数値を測定しています。撮影には一般的なベイヤーセンサーを使っているのですが、D800やSD1といった超高解像のカメラに向けたレンズを検査するためには、従来の装置では空間周波数、つまり解像度が足らない事に気づきました。

それなので、検査のためにもっと高性能なセンサーが必要になったのですが、調べてみたところ市場には最適なセンサーがないことに気付きました。けれども、そこではたと気づいたのです。『ちょっと待てよ、自分たちには高解像度のセンサー、フォビオンがあるじゃないか』と。

結局フォビオンを使うことに決め、測定用の新しいチャートも作成しました。さらにアルゴリズムやプログラムなども、全て自分たちで開発しました」

デイブ「新しい装置は縦横二軸の解像度やMTFのデータを出力するものなのでしょうか?ある一点だけを測定するのか、MTFデータを得るために複数の点を調べられるのでしょうか?MTFを測定するときに中心だけなのか、複数箇所を測定するのか、どちらですか?」

山木「もちろん複数です。中央と周辺ですね」

デイブ「製品の品質のバラつきはレンズ製造会社にとって常に付きまとう問題ですね。この新しいシステムによってバラつきを抑えることが可能になるのでしょうか?」

山木「それが私たちの目的の一つです。以前は全てのレンズに光を通して画像を投影し、品質を検査していました。これはこの業界では当たり前の手法です。けれども、どれが良いレンズでどれが悪いレンズかという判断は人間が目視で行なっていました。しかし、MTFシステムによって客観的にレンズを検査することができるようになりました」

デイブ「新システムはMTF以外のパラメーターも測定するのでしょうか?もしMTFだけを測定していたら他の要素、例えば色収差などは検査から抜け落ちてしまいます」

山木「色収差、歪曲、口径食といった要素は、基本的に製造ごとに変わるものではありません。これは設計で決定される要素なので、出荷時に検査はしません。しかし、個人的にこのA1システムを改良してもっと新しいことに使えるのではないかと思っています。フォビオンセンサーはそれぞれのピクセルですべての色を記録できるフルカラーセンサーなので、MTF以外の数値も測定できると思います。具体的に何を調べるのかは、まだ研究中ですね」

デイブ「私が今回の発表で驚いたのは、レンズ製造上のバラつきの問題が頻繁に発生するからです。各レンズ一枚一枚がわずかに中心からずれることで、描写が甘くなったり片ボケが発生したりします。それなので、発表を聞いた時には『画面上の複数の箇所でMTFデータを得られれば、おそらく品質のバラつきの問題は解決するだろう』と思いました。個人的に、このシステムによって業界に革命が起こり、レンズの品質が劇的に向上するのではないかと思います。このA1システムの開発を始めたのはいつ頃なのでしょうか?完成までにどのような困難があったのでしょうか?」

山木「完成するまでにだいたい1年半くらいかかりましたね」

デイブ「それは以前使っていたMTF検査装置を改良する形で作ったのですか?」

山木「そうです。そもそも以前のMTF装置を作るのには何年もかかりました。しかし、その経験があったから今回のは比較的早く完成させることができました」




デイブ「動画の撮影にフルサイズの一眼レフを使う人が増えているのですが、オートフォーカスと絞りの動作音が問題になっています。動作音がとても小さいレンズを作ればこの状況を解決できると思うのですかいかがでしょうか?」

山木「確かにそうですが、動画用のレンズを作るためには光学系を変えないといけなくなります」

デイブ「つまり、優れた動画用のレンズは、優れた静止画用のレンズとは違うと」

山木「マニュアルフォーカスなら問題はないのですが、オートフォーカス用に静かなモーターと絞りを使わないといけなくなると、設計を変える必要が出てきます。撮影中は常に被写体を追わなければいけないので、フォーカス用のレンズはとても小さくしないといけません。トルクがあってなおかつ静かなモーターというのは存在しないからです。静止画ではその必要がありませんから、重くて大きなフォーカスレンズが使えます」

デイブ「シグマとしては動画用のレンズも視野に入っているが、そのためにはいろいろやらなければいけないことがあるということでしょうか」

山木「そうですね」

デイブ「さきほど新しい複合材TSCの話をされましたが、これは従来のポリカーボネートとは何が違うのでしょうか?また、ポリカーボネートと比べてTSCはよりコストがかかるのでしょうか?」

山木「TSCはポリカーボネートより高価ですね。大きな違いは熱耐性です。ポリカーボネートは精度の面で言えばとても優れていて、良い金型を作ればユニットごとのバラつきはほとんどありません。しかし、金属部品は加工が必須で、工作機の摩耗などによって精度が安定しないのです。その点プラスチックの方が精度は安定していますが、問題は気温によって伸縮するということです」

デイブ「プラスチックの方が膨張率が高いと」

山木「はい。しかしTSCの性質はアルミニウムに酷似しています。それゆえ、安定していながら精度が高いという、プラスチックと金属のいいとこ取りをできるようになりました」

デイブ「なるほど。今回フォトキナ2012でお話ができてとても感謝しています。いつものように、とても素晴らしいインタビューになりました。また次のイベントでお会いできるのを楽しみにしています」

山木「どうもありがとうございました」




ボディを交換する時代 SIGMA DP1 Merrillレビュー

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元記事:Sigma DP1 Merrill Field Report Interchangable Cameras Instead of Interchangable Lenses


Sigma DP1 Merrill 19mm F2.8



まず初めに、私がつい先日書いたSIGMA DP2 Merrillのレビューの話から始めたい。もしまだ読んでいないのなら、このレビューを読み進める前に先に読んで欲しい。そのレビューで私はDP2 Merrillを絶賛しているが、それでも実際よりかなり控えめだということをわかってほしい。

本音を言うと、私がこれまでテストしてきた中で、DP2 Merrillは最高のピクセルレベルでの解像度を示している。これは誇張ではない。

ここ数週間の間、私は何人かの著名な写真家とともに行動しており、彼らはDP2 Merrillを自分で購入したり、私から借りたりして他のカメラとの比較をしている。彼らは、DP2 Merrillと他のカメラの画像を並べると一様に頭を振り、ここで見たことをネット上で発表しないように私に頼んでくるのだ。もし比較画像をアップしてしまったら、ネット上に凄まじい論争が巻き起こり、馬鹿馬鹿しい言い争いが続くのは目に見えている。私はそんな悲しい思いをしたくはない。

さて、今回のDP1 Merrillレビューの前書きとして、私はとりあえず簡潔に結論を書きたい。

2000ドルから3000ドルくらいの値段のカメラとの比較では、どのレンズと組み合わせても、SIGMA DP2 Merrillの方が画質は上である。DP2 Merrillはそのクラスのカメラの中では最高の解像度を持っており、それより更に上のクラスのカメラ、例えばニコンD800Eや中判デジタルバックを50x75cmにプリントしたものと比較しても全く遜色はない。

DP2 Merrillの写りがこれほど凄まじいのは、その30mm F2.8レンズの性能によるところが大きい。このレンズは恐ろしいほど切れ味があり、収差が皆無である。さらにメリルセンサーと組み合わせることで生まれる相乗効果は素晴らしく、そこから出来上がる写真には、喜びと驚きが満ち溢れるかのようだ。

もちろん、DP2 Merrillは完璧なカメラではない。操作するときの反応は良いが、データの書き込みは遅いし、ライブビューをさせていると液晶画面がグラグラ揺れる。全体的な操作性はとても良いが、このカメラはやはり素人向けのカメラではない。

これは「写真家」のためのカメラだ。撮影に全力を尽くし、技術と知識があり、常にRAWで撮り、現像の際にSIGMA Photo Proの使い勝手の悪さに耐え、そこからさらに別のソフトで仕上がりを追い込める、そういう人のためのカメラだ。



Foliage. Toronto, September, 2012
Sigma DP1M @ ISO 200



SIGMA DP1 Merrill


DP1 Merrillは19mm F2.8(35mm換算で28mm)のレンズを付けている以外はDP2 Merrillと同じカメラである。読者の皆が知りたいことはおそらく、この19mmのレンズがDP2 Merrillのレンズと同じくらい信じられない性能なのかどうかということだと思う。DP1 Merrillのレンズ性能が劣っているなら買うのを見送りたいと思ってる人もいるかもしれない。

DP2 Merrillの30mmとメリルセンサーはほとんど魔法のような組み合わせである。DP1 Merrillがそれと同等なら、この二台を持ち運ぶだけで、画質に妥協せず荷物を軽くして旅行に行く事ができる。そうやってワクワクしてる写真家は多いに違いない。

私は一週間に渡りDP1 Merrillで撮影をしてきた。基本的にDP1とDP2の違いはレンズだけである。DP1 Merrillのレンズは中央から3分の2くらいまでは極めてシャープだが、周辺はそれほどでもなく、開放で撮ると周辺は甘くなる。F8まで絞ると周辺も十分シャープになる。画像の端は多少暗くなり、収差も少し出る。ただ、これらはLightroomを使えば一瞬で修正できる。

ここで思い出して欲しいのは、DP1 Merrillのレンズは19mm(35mm換算28mm)だということだ。上に書いたような欠点は他の高級単焦点レンズにも同様に起こる。この焦点距離では、ライカやツアイスといった最高のレンズでも、周辺は甘くなるし、わずかな口径食と収差は発生するのだ。単純に、広角単焦点レンズというのは作るのがとても難しいのである。

問題なのはセンサーの性能だ。あまりに厳密に光を記録してしまうので、優れた性能のレンズであってもそのアラが見えてしまう。解像度が低いセンサーなら、レンズの欠点は見えないものである。

唯一の例外はDP2 Merrillだ。DP2 Merrillのレンズは凄まじく、センサーとの組み合わせも完璧だ。DP2 Merrillは歴史に残るカメラになるだろう。そして、周辺まで完璧な広角カメラといった実現不可能なものを求めない限りは、DP1 MerrillはDP2 Merrillの良い相棒になるだろう。この2つの組み合わせは、最強である。


失地回復への道


シグマにとってもっとも大きな問題の一つは、信頼を取り戻すことだろう。昨年のSD1の価格設定にまつわる混乱によって、多くの人が苦い経験を味わった。

つい先日も、地方で小さな小売業を営み、シグマのレンズをたくさん取引している店主と話をしたのだが、その時にSD1の話が出たのだ。

彼は今どんなカメラを使ってるのか尋ねてきたので、私はSIGMAのDP2 MerrillとDP1 Merrillだと答え、それがどれほど素晴らしいカメラか話した。

彼はただ頭を振って、彼がどれほどシグマに対して怒っているか話し、今後二度とシグマのカメラは扱わないだろうと言った。シグマがSD1を発売した時、シグマの営業は小売店に対し、SD1を仕入れるように圧力をかけたのは明らかだ。しかも、その時の販売価格は8000ドルである。

彼は取引先を困らせたくはなかったので、SD1を嫌々ながら一台仕入れた。しかし、SD1は在庫として倉庫に置きっぱなしになり、その後何ヶ月たっても売れることはなかった。いつまでも倉庫に置いておくわけにはいかないので、在庫を処分するために、そのSD1はただ同然の価格で売り飛ばされたそうだ。最終的に残ったのは赤字だけである。シグマのカメラを仕入れると思うと、またあの後味の悪さを思い出すと彼は言った。



A Face in The Trees. Toronto, September, 2012
Sigma DP1M @ ISO 200



DP1 Merrillは誰に向いてる?


誤解があってはいけないのであえて書くが、DP1 MerrillはDP2 Merrillの姉妹機であり、それゆえに素人向けのカメラではない。バッテリー寿命は酷いし、書き込みも遅いし、RAW現像ソフトは使いづらい。しかし、こういったDP1 Merrillの欠点を忘れるか許容出来るなら、中判カメラやシートフィルムに匹敵するような信じられない高画質を手に入れることができる。

これは、私がこの数週間DP1 MerrillとDP2 Merrillを使ってきて、実際に実感していることだ。私は長い間写真を撮ってきたが、単にカメラがどれだけ写っているかプリントして確かめるのを楽しむのは初めての経験である。こういった楽しみは4x5フィルムを大伸ばしした時や、高解像度の中判デジタルバックで撮影した時にか味わえなかった。

しかし今では、シートフィルムも、暗室も、ラボも、高価なデジタルバックもなしで、同じような体験ができる。しかもこれがたったの1000ドルの、レンズ一体型のカメラを使って、きちんと撮るだけで得られるのである。

実用上の問題としては、ベイヤー換算で2400万から2800万画素でプリントできる大きさ以上には引き伸ばせないことがある。これはだいたい50cm x 70cmくらいの大きさだ。プリントがこれより小さい大きさで、ISO100かISO200、三脚を使って撮った写真ならば、世界に存在するどのカメラとレンズであっても対等に勝負できる。それがニコンD800EであってもライカM9と最高のレンズであっても、負けることはないだろう。



Last Corn Standing. September, 2012. Clearview, Ontario.
Sigma DP1M @ ISO 200

ピクセル等倍



ライバル機たち


私の見る限り、SIGMA DP1/DP2 Merrillのライバルは二機種だ。ライカX2と、つい先日発表されたSONY RX1である。ライカX2は1600万画素のAPS-Cセンサーを搭載しており、SONY RX1はフルサイズの2400万画素である。X2のレンズは35mm F2.8であり、RX1は35mm F2のレンズを搭載している。どちらもローパスフィルターを使っている。

ここではレビューをしていないが、私はライカX2をしばらく使ってきた。操作面で言えば、ライカのほうがシグマより多少は使い勝手がいいが、解像度や画質全体での勝負となると全く相手にならない。シグマの画質は最高レベルに達している。しかも、X2の価格は2000ドルであり、これだけあればDP1 MerrillとDP2 Merrillの両方を買える。二台あれば予備機として使えるし、焦点距離の違った写真が撮れる。

SONY RX1は今の時点では操作性、使い勝手、画質などは全く未知数である。しかし、2800ドルという価格は少々行き過ぎのように思う。単焦点カメラということを考えても、この値段は高すぎるのではないか。




DP1 MerrillとDP2 Merrillのある生活


ひどいバッテリーに我慢しよう。遅い書き込み速度に慣れてしまおう。ゆらゆら揺れる液晶は気にしない。画質のことを考えたら、この程度の欠点は十分対処可能である。






新レンズ35mm F1.4 DG HSMについて一問一答

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元記事:Sigma Answers Your Questions About the New Lenses & Business




ここ数ヶ月のシグマの動向に注目している人には、シグマがこれまでよりも高品質なレンズを作ろうとしていることは既に周知の事実だろう。

私自身もこれまでシグマのプロレベルのレンズをいくつかテストしてきたが、その品質にほとんど不満はなく、いつも感心させられていた。

さて、先日シグマが発表した新しいレンズのラインナップについて、読者の方から多くの質問をいただいいている。今回シグマと話をする機会が得られたので、新レンズやビジネス、今後の展開について話を聞いた。

Fstoppers(以下F):シグマは今年に入って、レンズの品質をさらに向上させていくという発表を行いましたが、この方向に向けてレンズ設計を行なっていくという決定は、どのようになされたのでしょうか?

SIGMA(以下S):私たちはレンズ生産において最も重要な要素は、レンズの品質とそこに使われる技術だと考えています。私たちが過去10年にわたって使ってきたガラスは常に最高の品質のものでしたし、それは今後も変わりません。

F:シグマが高品質なレンズを作れるようになったのは、何か内部で設計や開発における改善や、新しく才能のある設計者を採用したといった変化があったからなのでしょうか?

S:才能のある設計者が増えたということはないですね。会津にあるシグマの工場では、垂直統合された生産システムに付随する形で意思決定をするメンバーが現場にいますから、生産現場全体で意思疎通がしやすくなっています。

それなので、トップから現場に至るまで情報の行き来がしやすく、革新的な製品の開発や、生産性の向上といった改善がしやすくなっています。詳しい情報はシグマ・グローバル・ビジョンのサイトで公開していますので、ぜひご覧ください。

F:新しい三本のレンズの中で35mmだけが手ブレ補正機能を持っていません。これはどうしてなのでしょうか?

S:アートラインの最初の製品ですので、他社の35mmF1.4のレンズと比較しても最高の性能を得られるように、設計を行ったからです。実際の製品を見ても、他社のレンズより優れた性能を達成できたと確信しています。

F:キヤノンの同カテゴリーのレンズと比較すると、35mm F2レンズは8群10枚ですが、シグマの35mm F1.4は11群13枚の構成です。この三枚の違いは写りにどう影響するのでしょうか?

S:設計思想によって、他の諸元と同様にレンズの構成も変わります。35mm F1.4 DG HSMはFLDやSLDといったガラスを使うことで各収差を極限まで補正してありますし、パワー配置も最適化されています。結果的に、合焦点から周辺まで極めて良好な画質を得ることができました。

どのような被写体であっても最高の画質を得られますが、特にボケの美しさは他の同等のレンズとは一線を画しています。一般的なレンズでは、周辺にコントラストの高い被写体がある場合、ボケている部分に多少なりとも色収差が発生しますが、このレンズでは色収差を極限まで補正していますので、周辺まで最高の解像度を維持したままの、素晴らしい画質を得ることができます。

キヤノン様の新型35mmとの比較ですが、確かにスペック上は似たようなレンズですけれども、設計や性能に大きな違いがあります。そもそもF1.4とF2とでは、求められる設計、製造のレベルが全く違います。なので、この2つのレンズが同じクラスのレンズだと考えるべきではないと思います。

F:FLDガラスとSLDガラスは何が違うのでしょうか?どうしてこれらの特殊なガラスが重要なのでしょうか?

S:色収差を極限まで補正するためには蛍石と同等の特性を持つFLDが必要不可欠です。SLDとの違いは以下の図をご覧いただくとわかりやすいと思います。





F:新しい複合材TSCによって、以前と比べてレンズの性能はどう変わるのでしょうか?この複合材を使うことによってレンズの製品としての寿命が変わったりするのでしょうか?

S:今回レンズ鏡筒に使用している新複合材TSCの特徴は、気温の変化による収縮がほとんどなく、強度が安定していることです。また、一般的に使われているポリカーボネートとの比較では、TSCの方がおよそ25%弾性が高いです。

熱による収縮がほとんどないので、金属部品との融和性が高く、結果的により高品質のレンズを生産することが可能になりました。また、ズームリングやスケーリングといった部品をより小さくすることもできました。それまで使っていたプラスチックの複合材と比較するとより高性能で高い耐久性を得ることができました。

F:SIGMA Optimization Proを使うことで、一般のユーザーが得られるメリットは何でしょうか?この新しい機能によって何ができるようになるのでしょうか?

S:SIGMA Optimization Proはカスタマイズによってできることを、さらに広げるために作りました。それぞれの写真家の目的によってレンズの設定を変更出来るだけでなく、レンズのファームウェアをアップデートすることも可能になります。

F:こういうことはよく聞かれるのかも知れませんが、シグマの35mm F1.4がつい先日発売されたキヤノンの35mm F2よりも価格が高いことについてどう思われていますか?

S:とりあえず二つ、事実を述べさせていただきたいと思います。まず一つ目、F1.4とF2のレンズとではその求められる性能に絶対的な差があります。二つ目、キヤノンの35mm F1.4との比較では私達のレンズのほうが手頃な価格になっています。キヤノンのそれは、ほとんど倍近い価格です。

私たちは同カテゴリーのレンズとの比較で最高の性能を達成するよう努めてきましたし、これからもそうです。それが私たちの使命です。これまで品質に妥協したことはありませんし、製品に不必要なコストを掛けることなく、手にしやすい価格になるよう努めてきました。

F:なるほど。それでは私をキヤノンユーザーだと思って、どうしてキヤノンではなくシグマのレンズを買うべきか、メリットをアピールしていただけませんか?

S:まず、シグマの35mm F1.4 DG HSMはとても美しいデザインです。外装は滑らかなマット調に仕上がっており、手に持つだけでその素晴らしさを感じていただけると思います。

このスペックで同じ価格帯の製品はありません。開放F1.4、超音波モーター、新複合材TSC、そしてFLDガラス。シグマ35mm F1.4 DG HSMは他に並ぶもののない唯一のレンズです。

F:当サイトの読者からツイッター経由でこんな質問をいただきました。「シグマが今後どうやって品質を管理するのかもう少し詳しく説明して欲しいです。新しい検査体制を導入することはわかりましたが、具体的に何が変わり、それが過去にあった品質の問題の改善にどうつながるのでしょうか」

S:シグマ・グローバル・ビジョンの一貫として、これから生産されるアート、スポーツ、コンテンポラリーのレンズは、私たちが独自に開発したMTF検査装置A1によって全数検査されます。4600万画素のフォビオン・メリルセンサーを使うことで、ベイヤーパターンを使ったセンサーでは不必要なレベルの高周波までも測定することが可能になっています。

フォビオンセンサーはAPS-Cサイズなので、フルサイズのレンズにも対応できるよう、検査には複数のテスト画像を使っています。この装置によって生産される全てのレンズが設計通りの性能を発揮できるので、写真家とそのカメラの要求に応えられると思います。

F:他にもいくつか質問が来ています。「ヨーロッパでは35mm F1.4はいくらになるのでしょうか?」

S:シグマベネルクスでは希望小売価格を950ユーロとしています。

F:「35mmは防塵防滴なのでしょうか?」

S:いいえ。防塵防滴はスポーツラインのレンズだけになります。

F:「旧型の30mm F1.4とは何が違うのでしょうか?」

S:35mm F1.4は30mm F1.4といくつかの面で異なっています。30mm F1.4はSLDとELDガラスを使用していますが、35mmはSLDに加えて蛍石と同等の光学性能を持つFLDとを使用しています。

35mmはフルサイズ用レンズですが、30mmはAPS-Cまでしか対応していません。また、35mmはフローティングインナーフォーカスを採用していますので、近距離の撮影時でも高品質な画像を得ることができます。

35mmは高性能な新複合材TSCを採用していますので、より高品質です。9枚羽根の円形絞りによって滑らかなボケを得ることができます。最後に、USBドックに対応していますので、ピント調整とファームウェアのアップデートが可能です。




シグマCEO山木和人氏インタビュー(2012年11月ポーランド)

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シグマCEOの山木和人氏がポーランドを訪れたのは11月の最初の週だった。シグマはレンズやカメラ、その他のアクセサリーを製造していることで有名な会社である。今回山木氏が初めてポーランドを訪れるということで、この貴重な機会に話を伺った。


-インタビューを受けていただきましてありがとうございます。ポーランドを訪れたのは今回が最初なのでしょうか?

山木:そうですね、今回が初めてです。本当のことを言えば、もっと早く来たかったのですよ。ようやくここに来ることができて、とても嬉しく思います。

-シグマのCEOであられるので、とてもお忙しいと思います。今回ポーランドに来られたのは、シグマにとってここが重要なマーケットだからなのでしょうか?

山木:もちろんです。ポーランドは私たちにとって最も重要な場所の一つですね。ポーランドのユーザーは写真について深い知識がありますし、とても要求レベルが高く、常に最高品質のものを手にするという傾向があります。それゆえ、ここで成功するということは、シグマの品質を認められるということで、とても重視しています。

-今後発売されるレンズのスケジュールについてお聞きしたいのですが、何か教えていただけますか?

山木:計画はたくさんあるのですが、私達のリソースは限られています。技術者と協議しなければいけないこともたくさんありますので、今後のスケジュールについてはお伝えできません。

-現在シグマから発売されているAPS-C用の単焦点レンズはフィッシュアイが二本と30mm F1.4だけですが、このカテゴリーから新しいレンズが増える予定はあるのでしょうか?

山木:もちろん、そういう要望を否定することはありませんが、最近の傾向としてAPS-Cの単焦点レンズへの需要が多いとは考えていません。もちろん、今後多くの要望があれば開発を検討します。

-最近のシグマは50mm F1.4、85mm F1.4、35mm F1.4と、高級な明るい単焦点レンズを次々に開発しています。今後、もう少し暗いけれどもそれほど高価ではない、35mm F2や85mm F1.8といったスペックのレンズを発売する予定はあるのでしょうか?

山木:私達の目標はすべてのカテゴリーにおいて幅広い種類の製品を開発することですから、将来的にそういったレンズを作る可能性はありますけれども、今の時点では確かなことは言えません。開発には優先順位がありますので、要望が高いものから製品化していく事になると思います。

-シグマは現在5つのカテゴリーを持っています。フォビオンセンサー搭載カメラ、フラッシュ、フルサイズ対応レンズ、APS-C対応レンズ、そしてミラーレス対応レンズです。シグマにとってこれらのカテゴリーの中で何が最も重要なのでしょうか?

山木:そうですね、それぞれのユーザーの関心によって何が重要かは変わると思うのですが、今の時点ではやはり、レンズ事業が最も重要だと考えています。しかし、私たちの目標はデジタルカメラメーカーとして一流になるということです。それゆえ、カメラ事業も私たちにとってとても重要だと考えています。

フォビオンセンサー搭載カメラを製造しているのは私たちだけですので、フォビオンの画質を評価していただいてるユーザーの方々に対する責任が、私たちにはあります。それゆえ、今後もカメラ事業にも積極的に取り組んでいきます。

-カメラについて質問なのですが、現在の技術でフォビオンのフルサイズセンサーを製造することは可能なのでしょうか?

山木:フォビオンの技術によって、センサーサイズが制限されるということはありません。大きいサイズでも小さいサイズでもセンサーの製造は可能です。技術的にはフォビオンのフルサイズを作る障害は何もないですね。

-シグマのSD1の価格はMerrillになってかなり下がりましたが、現在の売れ行きはどうなのでしょうか?

山木:正直、あまり売れているとは言えませんね。私たちの予想よりも少ないです。ただ、SD1を購入していただいたユーザーの方からの反応はとても良いです。もちろん、SD1は被写体がある程度限定されるカメラで、一台で何でも撮れるということはありません。SD1が得意とする被写体なら素晴らしい写真が撮れますので、ユーザーの方にはそこを気に入っていただいています。

-ご自身の一番のお気に入りレンズは何でしょうか?

山木:現行では50mm F1.4ですね。

-新しく発売される35mm F1.4はどうでしょうか?

山木:もちろん購入するつもりです。私自身もユーザーの一人として製品は自分で購入しています。新しい35mm F1.4は気になる欠点もほとんどなく、とても気に入っています。焦点距離もちょうど使いやすいですし、面白いですね。

-私も35mm F1.4には期待しています。本音を言うと、価格はもう少し高くなるのではないかと思っていました。価格が発表されたあとはとても驚き、同時にうれしくなりましたね。

山木:価格は低めに設定しましたが、だからといって画質が悪いということはありません。このレンズは最高の画質を達成することを最優先に開発しました。このレンズをできるだけ多くのユーザーに手にとってもらいたいので、品質以外のコストを可能な限り下げるようにしています。

つい最近も製造と開発部門に大規模な投資をしたばかりで、内部の蓄えがほとんどなくなってしまいました。さらに管理コストも可能な限り下げるよう努力しています。私たちは小さな会社ですので、マーケットの変化にすぐに対応することが大事なのです。

35mm F1.4を安価なレンズだと考えて欲しくはありません。品質に妥協をしたから価格が低いのではなく、余計なコストをかけないようにすることで、この価格で販売することが出来ました。

-シグマから発売されている、いわゆるポートレートレンズは85mmが一番長いです。フルサイズのカメラが普及するに従って135mmという、かつて人気だった焦点距離が再び脚光を浴びてきています。これについてどう思われますか?

山木:そういった要望はたくさんいただいています。135mmはかつてとても人気だったレンズですが、最近はそうでもありませんでした。しかし、ここに来て急に注目を浴びている焦点距離ですね。できるだけ多くの種類のレンズを提供するというのが私たちの責務ですので、要望が大きければ早く製品化できるように努力したいと思います。

-シグマには多くの興味深いレンズがありますが、一部には手ブレ補正機能を搭載しないままのものがあります。300mm F2.8や100-30mm F4といったレンズを更新する予定はあるのでしょうか?

山木:残念ですが、今後発売するレンズの詳細をお話することはできません。もちろん、レンズの更新は続けていきますが、開発には優先順位があります。

-ミラーレスカメラはとりわけ日本で大人気ですが、ご自身はどのように受け止められていますか?

山木:とても成長しているジャンルだと思います。現在ミラーレスカメラは日本だけではなく、韓国や台湾でも人気ですし、他の地域でも売り上げは伸びています。やはり小さなボディというのが多くのユーザーにとって魅力的なのでしょう。

さらに、ミラーレスはプロにとってもメリットの大きいシステムです。電子ビューファインダーやライブビューを使うことで、仕上がりの露出やホワイトバランスを確認しながら撮影ができますから。それゆえ、今後もミラーレス市場は伸びていくでしょうし、もっと高価なプロ向けのミラーレスも増えていくと思います。

今のところミラーレスのユーザーのほとんどはキットレンズしか使わないので、そこは今後の課題ですね。

-新しいレンズが発表されましたが、その中に120-300mm F2.8があったのは驚きました。このモデルは2010年に発売されたばかりです。どうしてこんなに早くモデルチェンジがされるのでしょうか?

山木:まず、私たちは現在レンズを再編成しており、全てのレンズは今後3つのカテゴリーに分類されます。120-300mm F2.8も遅かれ早かれ更新をしなければいけません。しかし、このレンズの設計はほとんど完璧に近く、今の時点でこれ以上の性能のレンズを作ることはできません。なので、光学系はそのままにして、外装を新しくし、SIGMA Optimization Proに対応したスイッチを付けて発売することにしました。

-Lens Rentals Serviceによると2010年に発売された120-300mm F2.8には外装に問題があり、そのせいで外装を交換しただけの新型を発売するのではないかと言っています。これについて何かコメントはありますか?

山木:一番最初に出荷された製品の一部に問題が起こりやすかったのは事実ですが、現在この問題は完全に解決されています。

-シグマは現在市場にあるほとんどのマウントにレンズを供給していますが、どのマウントがもっとも人気があるのでしょうか?

山木:キヤノンとニコンですね。どちらも同じくらいの量が売れています。

-ソニーマウントはどうでしょうか?

山木:ここ数年は年を追うごとに伸びてきています。

-インタビューを受けていただきましてありがとうございました。またポーランドを訪問していただくのを楽しみにしています。

山木:ぜひもう一度来たいと思います。ありがとうございました。





DP1 & DP2 Merrill フィールドテスト&レビュー(その1)

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The Camera Store TV クリス・ニコルス
Luminous Landscape ニック・デブリン

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クリス「The Camera Store TVにようこそ!僕はクリス・ニコルスだ。今まで色々なカメラをレビューしてきたんだけど、今回はシグマのDP1とDP2 Merrillを取り上げようと思う。

このカメラは使い勝手が悪いせいか実際に持ってる人があんまりいないんだけど、今日は実際にこのカメラを買って使ってる人に来てもらった。

ニック・デブリンだ。今日は来てくれてどうもありがとう。ニック、マジでこのカメラ買ったのかい?」

ニック「信じられないかもしれないけど本当に買ったよ(笑)このカメラのことは一般的にはあんまり知られてないみたいなんだけど、今回のレビューでそういうイメージを変えれればいいなと思ってる」

クリス「なるほど。ニックは今回、この小さなカメラでものすごい写真が撮れるってことを証明してくれるそうなんだ。じゃあさっそく、実際にフィールドで使ってみて、どんな写真が撮れるのかみてみよう」

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クリス「まずシグマのカメラについて聞きたいんだけど、いったい他のカメラと何が違うんだい?これが最初のDPってわけじゃないよね?」

ニック「ベイヤーセンサーは基本的に色を補完して写真を作ってるんだけど、ディック・メリルっていう人が、各ピクセルで色を正確に記録できるFOVEONっていうセンサーを作った。だからFOVEONセンサーで撮られた写真は色を補間してないんだ」

クリス「そのセンサーを使えば暗いところでも綺麗な写真が撮れるの?」

ニック「もちろん!このカメラの場合ISO100よりも上の感度でも、そうだな、ISO125とかISO160だったら完璧な写真が撮れるよ」

クリス「おいおい、ISO160って、何だよそれ(笑) まあいいや、要するにこれは三層構造をしてるからデータサイズがこんなにバカでかいんだよね?5000万画素クラスのサイズだよ。そのくせ、実際の画像サイズはそれよりもずっと小さいし」

ニック「データサイズが大きいことは良いことだよ。メールに添付して送ったりしなければね(笑)」

クリス「まあ、そうなんだろうけど、データがでかいくせに実際の画像は3分の1のサイズしかないんだから、何だか騙された感じだよ」

ニック「クリス、僕も最初は君みたいにこのカメラのことを胡散臭いと思ってたんだよ。でも、実際に撮れた写真をディスプレイで確認して、すっかりこのカメラのファンになったんだ」

クリス「うーん、でも今日確認したいことはたくさんあるんだ。使い勝手だったり、どんな条件でどういう写真が撮れるのかとか・・・」

ニック「そういうことなら、ここでグダグダ言ってても始まらないよ。とりあえず使ってみよう」

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クリス「よし、撮ったぞ。画面確認ボタンを押してと・・・1秒、2秒、3、4、5、おい、マジかよ、10秒!ようやく書き込み終了。一番速いカード使ってるのに10秒もかかるのか!」

ニック「クリス、これを普通のデジタルカメラだと思っちゃだめだよ。100万円するアルパに80万円のフェーズワンデジタルバックを付けたのと同じ画質なんだ。それがコートのポケットに入る大きさで、9万円で買える」

クリス「もし本当に、このカメラの画質がそこまですごいんだったら、これは本当にとんでもないカメラだし、バーゲンプライスだと思うよ」

ニック「気をつけなきゃいけないことは一つだけだ。プロ用の機材を使うときと同じように、三脚に乗せて、構図をしっかりと決め、しっかりと露光させること。それだけでこのカメラの真価がわかるよ」

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クリス「ニック、ちょっと問題が発生した。35枚写真を撮っただけなんだけど、バッテリーが空になったんだ。気温は-2度だから、そんなにものすごく寒いわけじゃない。これって普通なの?」

ニック「フィルムだったら36枚で一本終わるよね」

クリス「・・・(笑)え?マジで?冗談だよね」

ニック「別に冗談じゃないよ(笑)僕のは70枚でバッテリーが切れた。まあ寒いしね」

クリス「バッテリーひとつで70枚しか撮れない!ちょっと待ってよ、今使ってるSDカード16GBだから200枚か250枚以上写真撮れるはずなんだけど、ひとつのバッテリーで70枚!?」

ニック「バッテリー交換なんか簡単なんだから、新しいのに換えればいいんだよ」

クリス「シノゴで写真撮ってるんじゃないんだからさ。つまり、この小さなバッテリーはフィルムで一本分の写真が撮れて、フィルムと同じように全部撮り終わったら外してまた新しいのを入れるってこと?」

ニック「うん。フィルムと一緒だよ」

クリス「マジかよ!」

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ニック「このカメラのいいところは一日中持ち歩いても、全然苦にならないってことだね」

クリス「確かにこのカメラはコンパクトだよ。でもレンズ交換できないから焦点距離を変えようと思ったら二台持ち歩かなきゃいけないよね。一つは30mm F2.8で35mm換算だと45mmになる」

ニック「うん。で、もう一つは19mm F2.8。これは28mm相当になるね。シノゴだとこの組み合わせは150mmと90mmってことになるのかな?」

クリス「いやいや、フィールドカメラの話じゃないんだから(笑)でも、確かにカメラはコンパクトだけど、こうやって常に三脚につけて撮ってるとほんとにフィールドカメラ使ってるみたいだよ」

ニック「三脚もそうだけど、換えのバッテリーを何十個か持っておくと安心だね」

クリス「そうそう、何十個って(笑)メモリーカードも64GBのが何枚かあると安心だね。全くひどい話だ(笑)」

ニック「バッテリーもメモリーもたいしてかさばらないんだから、十分あるに越したことはないよ」

クリス「確かにね。でも、こうやって三脚に付けて丁寧に写真撮ってると、何だか心が洗われてくる気がするよ」

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クリス「なるほど、この2つの焦点距離の組み合わせはいいね。すごいシャープだ」

ニック「レンズは本当にすごいよ。このカメラの性能はレンズによるところが大きいね。センサーにぴったり合うように配置された特別設計だから。特に30mmはすごいよ。めちゃくちゃシャープだ」

クリス「確かに、こうやって画像を確認しててもそれはわかるよ。でも、わざと意地悪な質問をしてみるけど、このカメラができることは他のカメラでもできるんじゃないの?ISO100だったら何で撮ってもみんな綺麗だって言うだろうし。それにもっと違う焦点距離で明るいF2やF1.8のレンズを持ったカメラもたくさんあるよ」

ニック「DPに勝てるカメラはないよ。フジのX100だろうとソニーのRX1だろうと、次元が違うんだ」

クリス「うん、実は僕もそう思い始めてるところだ(笑)」

ニック「一つ気をつけることがあるとすれば、風景撮影の時だね。DPはAPS-Cサイズのセンサーを使ってるから、被写界深度がフルサイズよりも深いんだ」

クリス「それは確かにそうだね。特に今日みたいな被写体の時はメリットが大きいよ」






DP1 & DP2 Merrill フィールドテスト&レビュー(その2)

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その1の続き

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ニック「さあクリス、これから一眼レフ界の王者、D800Eと、その小さなカメラを比較してみようよ」

クリス「DP2とD800Eで画質勝負させようってこと?」

ニック「うん」

クリス「DP2の存在価値は画質が良いことだけだ、って誰が言ったんだっけ?」

ニック「君が言ったんだよ(笑)」

クリス「そうだった(笑)このカメラは画質が全てだ。本当に画質は良いんだよね?」

ニック「うん、すごいよ」

クリス「ネット上でもこのカメラの画質はひたすら絶賛されてるよね。もし、DP2がD800Eに負けなかったら、僕は本当に降参するよ」

ニック「じゃあ、確かめてみよう」

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クリス「クソッ!またバッテリーが切れた!」

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クリス「ニック、そろそろ帰って画像を現像してみよう。何が写ってるか楽しみだ」

ニック「そうだね。今日はいい天気だったし、結果が楽しみだよ」


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クリス「さて、The Camera Store TVのオフィスに戻ってきたんだけど、これから写真を確認して、どのカメラの画質がいいのか確認しようと思う。プリントもしないとね」

ニック「じゃあさっそく見てみよう」

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クリス「ニック、未だにMerrillのRAWファイルをLightroomやApatureやPhotoshopで開けないんだけど」

ニック「まだ無理だけど、Lightroomのサポートはもうじき始まるよ。Adobeは今対応する準備をしてる。でも、ちょっと技術的に難しい部分があるしみたいだし、優先順位は高くないんだ」

クリス「わかった。じゃあシグマのソフトで開いてみよう」

ニック「どのメーカー純正ソフトも同じなんだけど、これもひどいソフトでね(笑)でも、とりあえず使えなくはないよ」

クリス「まるでシグマのカメラそのものだね(笑)」

ニック「うん。一応最低限の仕事はやってくれる(笑)ピクセル等倍で画像を見るにはボタンを押してちょっと待たなきゃいけないけど」

クリス「このバーが動き終わると等倍で見れるわけだね」

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ニック「最新のパソコンだとすぐに等倍を見れるよ」

クリス「僕は旧型のマックを使ってるからこの作業にすごく時間がかかるんだよね・・・」

ニック「でも待つだけの価値はあるよ。ほら、等倍を見てみると・・・この岩肌とか、葉っぱとか、どれもすごい画質だよ」

クリス「じゃあJPEGも見てみよう。正直に言うと僕はJPEGの画像を見て衝撃を受けたんだよ。一応JPEGで撮ることもできるんだけど、その画質を見ても感動するどころか・・・何というか・・・」

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ニック「これが君が撮ったJPEGだね。ISO1600だ。まるで新聞の写真だよ」

クリス「こりゃ酷い(笑)」

ニック「水面に元々ない紫や緑の斑点が出てる。これはちょっとひどいね。5年前のカメラのISO3200がちょうどこれくらいだったと思うよ。DPの高感度をJPEGで撮る意味はないだろうね」

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クリス「わかったよ。JPEGで撮るなと(笑)みんなも使っちゃだめだぞ。JPEGは無意味だ。いつもRAWで撮ろう」

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ニック「現像した写真をいくつかライトルームに取り込んで、ここから写真の印刷をするよ。今ちょうどこの画像をプリントしてるんだけど、等倍で見るとすごい。びっくりするよ。

シグマのカメラは決して使いやすくはないんだけど、専用ソフトはパラメーターを動かすだけで簡単に調整できて便利だ。他のRAWを現像するときと同じように、いくつか手順を踏まなきゃいけないんだけど、一度やり方を覚えてしまえば、ものすごくきれいな写真を作ることができるよ」

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クリス「なるほど、こうやって画面を見てると、このカメラのすごさがわかってきたよ。じゃあ次はプリントを見てみようか」

ニック「そうだね」

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ニック「クリス、どっちがD800EでどっちがDP2だと思う?」

クリス「間違いなくこれがD800Eだよ。ということはあっちがDP2ってことになるんだけど、すごい画質だね。本当に微妙なところなんだけど、わずかにディテールが違うかな。でもほとんど同じレベルだよ。こうやって近づいてみて初めて違いが分かる程度だ。もちろんD800Eはバケモノじみたカメラだからすごいのは当たり前なんだけど」

ニック「別のカメラだから色とかコントラストとか違うし、正確に比較することは難しいんだけど、とりあえず解像度だけに注目してみると、違いを見つけるのは難しいよね。もちろん、こんな大きなプリントの細部を、近づいて見て比べるのは馬鹿馬鹿しいことなんだけど」

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クリス「D800Eがすごいのはわかりきったことだよ。でも、センサーのサイズや画素数を考えると、実際には3分の1くらいの画像サイズで、だいたい半分くらいの解像度しかないDP2の画質がここまですごい画質だって言うのは本当にビックリした。たぶん今世の中にあるAPS-Cサイズのセンサーの中では一番の画質だろうね」

ニック「普通のプリントサイズから、たぶんA2くらいまでならD800EとDP2の画質の違いを見つけるのは難しいと思うよ」

クリス「ちょっと離れて普通の鑑賞距離から写真を見比べると、ただ二枚のきれいな写真があるようにしか見えないんだけど、片方は30万円のカメラ、もう片方は9万円のカメラなんだよね」

ニック「面白いのは、離れて見るとシグマのほうがよりくっきりして見えることだよね。細部のコントラストが高いせいなんだけど、こういう画質は他のカメラじゃ得られないんだ。僕が最初にこのカメラに注目したのはそこなんだよ。この解像感が最大の特徴だ」

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ニック「さてクリス、撮影をはじめる前にこの小さなカメラについて随分言ってくれたけど(笑)、こうやってA1サイズにプリントした写真を前にして何か言うことはあるかい?」

クリス「これはすごいよ(笑)実際は1500万画素のサイズしかない画像を、このサイズに印刷してこんな画質だなんて。この写真は本当に美しい。もちろん僕が撮ったからってわけじゃないよ(笑)細部までものすごく解像しててシャープだ。DP2はものすごい写真が撮れるカメラだよ」

ニック「もしこの写真がギャラリーに飾ってあったら、これがAPS-Cセンサーで撮られたカメラだって思う人は誰もいないだろうね。他のAPS-Cは勝負にならないよ。きちんと撮ればD800Eと同等か、状況によってはそれ以上の画質の写真が撮れるんだ」

クリス「しかもこれがたったの9万円だからね。もちろん、これは万人向けのカメラじゃない。使い勝手は悪いし、現像ソフトはイマイチだ。高感度もせいぜいISO200まで。

AFは昔使ったことがあるDP1よりも随分良くなってるし、他にもいろんな部分が進歩してるのは確かだ。あと、これが一番大事だけど、何よりも使ってて楽しいしね。でもやっぱりこれは万能なカメラじゃないよ。何でも撮れるわけじゃない」

ニック「子供の誕生日パーティーに持っていくカメラじゃないよね」

クリス「勘弁してよ(笑)」

ニック「だから、ニコンの一眼レフとDP2は全く違う概念のカメラなんだよ」

クリス「何でも撮りたきゃ他のカメラ使えと(笑)」

ニック「そういうこと。これはフィルムカメラを使ってる時を思い出せばいいんだよ。一度セットしたら感度は変えれない。慎重に構図を決めてピントを合わせシャッターを切る」

クリス「これはシグマのDP『Merrill』だからね。前のDPとは違うから買いたい人は注意してよ。以前のDPは正直良くなかったし、シグマの一眼レフも動作が遅くて酷いものだった。でも、メリルになってからは確かにものすごい進歩だと思うよ。画質が全てを物語ってる。ディスプレイ上だけじゃなくてプリントしてもすごい画質だ」

ニック「シグマはフォビオンの技術にプライドを持ってるし、良いカメラを作ろうと一生懸命やってる。でも、ゼロから作らなきゃいけないからシグマにとってカメラを作るのは大変だ。でも、画質に関しては疑う余地は何一つないよ」

クリス「もしこのカメラが自分の撮影スタイルに合って、きちんと使いこなせるのなら、DP Merrillは手に入れやすい価格で、高画質な写真が撮れる、素晴らしいカメラだ。今日はどうもありがとう、ニック」

ニック「楽しかったよ、クリス」



SIGMA Photo Pro Monochrome Modeはなぜすごいのか?

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シグマは2013年の1月8日に「SIGMA Photo Proにモノクロ専用モードを追加する」と発表したんですが、その詳しい話を聞いて僕は密かにショックを受けました。

「従来のモノクロームは、カラー処理を行った後にモノクローム画像を生成していましたが、今回開発したモノクローム専用の現像は、カラー処理を一切行わずモノクロームの画像生成に最適な処理を行っています。」

との説明なんですが、僕はずっと昔から「SPPのホワイトバランスでモノクロ指定すると『カラー処理を一切行わずモノクロームの画像生成に最適な処理を行ってい』るに違いない」と勝手に思い込んでいたんです(笑)

まさか、今までのモノクロが単にカラーの彩度を落としただけだったとは!マジかよ!

ということで、「え?今までのモノクロは何だったの?」というちょっとした失望と、「ようやく本物のフォビオンのモノクロに出会えるのか!」という喜びが交差した、非常に微妙な気分でアップデートを心待ちにしているわけです(笑)

で、今回はこれだけの話なんですが、どうもネットのあちこちを見てみると、このモノクロモードの処理が今までの方法とはどう違うのか、あんまり広く知れ渡ってないようなので、僕が知ってることと、たぶんこういう処理だろうっていう予測を含めて、モノクロモードの仕組みについて解説してみたいと思います。

(ちなみにあくまでも僕の勝手な予想なので実際の処理とは違うかもしれません)


さて、まずフォビオンの基本概念から説明します。

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フォビオンは要するにこんな感じですね。上から青を感知する層、緑を感知する層、赤を感知する層の三つに分かれてます。

光は波長によって色が違ってるんですが、その波長によってシリコンに浸透する深さも変わってくるので、フォビオンは色の違いを記録できるわけです。

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例えば青が10、緑が8、赤が6ある光があるとしましょう。そんで、フォビオンは各層で対応した色を全部捕捉し、別の色は通過するごとに2つずつ、色が減っていくとしましょう。

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イメージとしてはこんな感じです。全部で10+8+6=24の光があって、一番上の層で10+2+2=14を記録、二番目で6+2=8を記録、一番下で2を記録するわけです。

シリコンの特性は物理的に決まってますから、通過する時の光の減衰量は一定です。なので、各層で得られた数字を逆算して、元々あった光の各色ごとの量を正確に再現できるわけです。フォビオンが綺麗なのは各ピクセルで正確に色と輝度が測定できるからなんですね。


問題になってくるのは光の量が足りない時です。各層を通過すると必ず光が減ってしまうので、光の量が足りないと情報が狂ってしまいます。例えば上の図の10,8,6を半分の5,4,3にしてみます。で、各層を通過するごとに減る光の量は変わらない2のままとします。

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一番下の層で記録できるデータがゼロになってしまいました。こうなってしまうと元々の色が「赤がちょっと少なかっただけ」なのか「赤が全くなかった」のか、区別がつきません。この状態からでもどうにか計算して色を作ってると思うんですが、それが本来の色と同じである保証はありません。

実際のセンサーはもっと複雑で、いろいろな方法で情報を記録できる工夫がされてると思うんですが、「各層を通過していくごとに光が減っていくので、入ってくる光の絶対量が足りないと色の再現が難しくなる」って考えはたぶん変わらないと思います。

なので、フォビオンをカラーセンサーとして考えた時、やっぱり「高感度に弱く、低感度でいい写りをするセンサー」なのは仕方ないのかなと。



さてしかし、これが色のことを忘れてモノクロだけで考えたら、全く話は別になります。高ダイナミックレンジで低感度から高感度まで強い、最強のモノクロセンサーに変わる可能性を秘めているわけです。


最初に見た図をもう一回見てみましょう。

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10+8+6=24の光が入ってきたのを、各層それぞれ14+8+2=24として記録してるわけですね。色のことを考えず、光の絶対量だけで考えたら入ってきた量と測定できた量に変わりはありませんから、完璧に輝度情報の再現ができるわけです。

光の量が半分になった二つ目の図も、もう一回見てみましょう。

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これも、カラーセンサーとして考えたら三番目に情報がないので色の再現がおかしくなりますが、モノクロとして考えると、5+4+3=12の光が入ってきたのを、各層で9+3+0=12として輝度情報を完璧に再現できてます。

さらに光が半分になって青2.5、緑2、赤1.5になったとしましょう。

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二番目、三番目の層では全く情報が記録できていません。この状態では色の再現は不可能です。

けれども、これがモノクロでいいのだとしたら、一番上の層だけで2.5+2+1.5=6の情報を記録できています。これは入ってきた光の量と同じことになるので、輝度の再現はできます。


つまりどういうことか。

これまででは全く絵を作れないようなわずかな光でも、センサーに届いた光をちゃんと測定できるので、高感度に強くなるし、低感度でも暗部の階調が正確になるわけです。


さらに、モノクロモードでは暗部だけでなく、ハイライト方面でも改善が見込まれます。

センサーはバケツのようなもので、そこに光を貯めて、集まった光の量を電気に変えて測定してるのですが、貯められる光の量には限界があります。ある一定量を超えると光が飽和して真っ白に飛んでしまうわけですね。

フォビオンは三層構造なので、一段目、二段目が飛んでしまったら色の再現は不可能で、現像しても色転びが起こったりしていました。しかし、モノクロなら、三段目が飽和しなければデータとして入ってきた光の量を再現できる可能性が高くなります。

プレスリリースで「各層で捉えたRGBそれぞれの輝度情報を忠実に再現し、全体のダイナミックレンジが広がり、ハイライトからシャドーまでのトーンの再現性が良好なモノクローム画像が得られます」と書いてあるので、ハイライトも今まで以上に粘るようになっていると思います。


ということで、フォビオンのモノクロ愛好家として、今回のモノクロモードの実装がどれだけ革新的なのか、簡単に説明してみました。バージョンアップが待ち遠しいですね!





山木社長インタビュー (CP+2013)

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CP+は日本のカメラメーカーのトップに会えるいい機会である。今回はシグマCEOの山木和人氏に話を伺った。

Digital Focus(以下DF):35mm F1.4レンズの開発経緯をお聞かせ下さい。

山木:今回の開発にあたり心がけたのは最高の光学性能を達成することです。とりわけ軸上色収差をなくすことを目標にしました。軸上色収差は撮影後に補正することがとても難しい収差なので、これを克服したかったのです。

今のデジタルカメラはレンズの欠点をソフト的に処理しているのですが、基本的にこのような補正は画質を損ないます。例えば口径食を補正するとノイズが増えますし、歪曲を補正すると解像度が落ちます。それゆえ、まずは補正されるべき欠点を持たないレンズを開発することが重要になるのです。

DF:D800のような高画素数のカメラが登場し、単焦点でなければその解像度に追いつかないようになってきています。このような高画素数のカメラに対応できるズームレンズを作ることは不可能なのでしょうか?

山木:レンズに不可能はありません。新素材や新技術、新しい開発ソフトの登場などで、これまで不可能だった複雑な設計も可能になり、性能は上がり続けています。高画素センサーに対応するズームレンズを開発することは十分可能です。

DF:DP3と同時にSIGMA Photo Proに新しい機能を追加すると発表されました。このモノクロモードについてもう少し詳しく説明していただけますか?

山木:他のカメラメーカーと同じように私たちのカメラにもモノクロで撮影する機能はあったのですが、それは単にカラー画像の彩度を落としただけのものでした。しかし、新しいモノクロモードは全く異なる方法で現像をしています。

フォビオンセンサーは他の一般的なセンサーと違い、カラーフィルターを使用していません。例えばライカモノクロームに使用しているモノクロセンサーのように、フォビオンは各ピクセルごとに正確に輝度を測定できます。それゆえ、今までよりも階調が豊かでダイナミックレンジの広いモノクロ画像を作ることができるのです。

DF:モノクロモードは特定のカメラにしか実装されないのですか?

山木:モノクロモードはRAWで撮影した時しか使えませんが、基本的にはソフトウェア上で処理します。RAWで撮影し、SIGMA Photo Proを使えばそのままカラーで現像したり、モノクロにしたり自由にできます。また、色の情報は保持したままなので、カラーフィルターを付けたのと同じ効果をモノクロ現像で再現することもできます。

DF:フォビオンなら全てモノクロで現像できるのですか?

山木:メリルセンサーを搭載したフォビオンなら全て使用可能です。フォビオンは世界で1つだけの、本物のカラー写真と本物のモノクロ写真を一台で撮ることのできるカメラになりました。

DF:シグマはミラーレス用にコンパクトな単焦点レンズを作っていますが、ミラーレス用のズームレンズを作る予定はありますか?

山木:まず最初に単焦点を出すことにしたのは、熱心な写真愛好家に向けて画質の良いレンズを提供したかったからです。もちろん、開発は優先順位に従って行なっていくので、将来的にはミラーレス用のズームレンズも発売したいと思っています。

DF:DPシリーズにズームを搭載する可能性はありますか?

山木:難しいですね。過去にもDPシリーズにズームを付け加えるべきかどうか社内で議論をしたのですが、やはり厳しいという結論でした。ボディサイズがどうしても大きくなってしまいますし、小さくすると今度は画質が犠牲になってしまいます。

DF:F1.4レンズに手ブレ補正機能を搭載することは可能なのですか?

山木:技術的には全く問題はありません。個人的に明るいレンズに手ブレ補正は必要ないと考えていますが、ユーザーからの要望が多ければ将来的には搭載していくことになると思います。

DF:フォビオンセンサーの将来についてお話をしていただけますか?

山木:今はまだ秘密にさせて下さい(笑)。私達はまず画質の向上に取り組まなければいけません。なので、次世代フォビオンのセンサーサイズや解像度などのスペックについて話すことはできません。一つ言えるとすれば、フォビオンセンサーを大きくすることに技術的な障害は全くないということです。しかし、今はもっと画質を上げることに集中しています。

DF:DPシリーズの画質は素晴らしいのですが、そのせいか一眼レフであるSDシリーズがあまり評価されていないように見えます。シグマは今後も一眼レフを作り続けていくのでしょうか?

山木:もちろんです。私たちはキヤノンやニコンといった巨大なメーカーを相手にしているわけではなく、もっと限られたユーザーに向けてカメラを作っています。日本では特別な目的のためにシグマの一眼レフを使っているユーザーが沢山います。彼らはたいていキヤノンやニコンなどの一眼レフも併用しており、フォビオンの画質が必要な時にシグマのカメラを使っています。私たちはこういったユーザーの要望に応えていかなくてはいけません。

DF:シグマが今後動画用のレンズに力を入れていくということはあるのでしょうか?

山木:静止画用のレンズに必要なモーターと動画用に必要なモーターは違います。なので、レンズメーカーが動画用のレンズを作るのは大変です。モーターだけではなく、レンズ配置も全く違う発想で設計しなければなりません。

今一般的に使われているモーターはトルクはあるのですが動作音が大きいので別の方法を考える必要があります。APS-Cやフォーサーズといった小さなセンサー用のレンズならまだ何とかなるのですが、フルサイズ用のレンズで画質がよく、さらに高速で静かなモーターを使うとなると、相当難しいのが現状です。

DF:ありがとうございました。



SIGMA Photo Pro Monochrome Mode ブルー100%で高感度を堪能する!

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SIGMA DP2 Merrill F2.8 1/1250 ISO6400 (ISO20000相当)


先月SIGMA Photo ProにMonochrome Modeが追加されると発表されてから、アップデートを心待ちにしていたのですが、つい先日ダウンロードが開始されました。

ということで早速試してみました。

フォビオンの構造から考えるとモノクロモードはかなり高感度性能が上がると予測していたので、実際に試してみます。

とりあえず撮ってみたのがこれ。ISO6400に設定してさらに露出を-3にしています。シャッター速度は1/1250になりました。


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これはもうどうにもならんですね。

フォビオンの高感度で色を出すのは難しいので、とりあえずモードはカラーのまま、ホワイトバランスでモノクロにしてみました。





画面全体に出ていた色ムラが、ホワイトバランスをモノクロにしても残ったままです。カラーの画像から彩度を抜いただけなので、カラーで出ていた色ムラは消えません。

普通ならこれで諦めるんですが、モノクロモードだとどうなるか、ちょっと試してみましょう。


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色ムラは消えました。

けれど、暗部の情報はあまり変わっていません。

最初この写真を見た時「モノクロモードにしてもあんま高感度性能変わらんのかなあ?」とちょっとがっかりしました。

もうちょっといろいろ試してみようということで、カラーフィルターをいじってみます。そうすると、青にふるとノイズが消える事がわかりました。


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青100%にすると、レンズの下部の暗部もしっかりデータが生きていたことがわかります。今まで見えていなかったレンズのEX SIGMAの文字もはっきり見えるようになりました。

以前にも記事に書いたように、フォビオンは一番上の層が青色です。カラーフィルターで青100%にすると、一番上の青の情報だけをモノクロの情報として利用するので、二層目、三層目で情報が記録されていなくても、輝度の再現は可能になるのでしょう。

ということで、やっぱりモノクロモードはすごかったです。

みなさんもぜひ高感度撮影を試してみて下さい。




SIGMA Photo Pro Monochrome Modeのカラーフィルター機能を使ってカラーを再現する

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SIGMA Photo Pro Monochrome Modeから三色合成

モノクロモードはいろいろ楽しいんですが、ふと「これってちゃんと3色分離してんのかな?」「本当に分離してるんだったらカラーを再現することもできるはずだよな」と思ったんで、ちょっとした実験をしてみました。

まず画像をモノクロモードで開いて、赤、青、緑のそれぞれが100%になるモノクロ画像を作ります。

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青100%

カラーフィルターの色を変えて、赤、青、緑のそれぞれ100%の画像を作り、名前を付けて保存します。

次に保存した3枚の画像をPhotoshopで開き、モノクロの画像を赤、青、緑の画像に変えます。

「フィルター」→「色調補正」→「レンズフィルター」と開いていきます。

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その後、対応する色を指定します。

いろいろ試したんですが、輝度を保持のクリックを外して適応量を100%にするといい結果が出ました。


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三枚それぞれを単色のカラー画像に変更します。


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そして、三つの画像を合成します。今回はコピー&ペーストでレイヤーを重ねただけです。


レイヤーの合成の仕方には色々種類があるのですが、今回は「比較(明)」を使いました。


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三枚全部合成すると、ちゃんと色が出ました。ちょっと感動(笑)

もちろん、カラーモードで現像したものと比べて色はおかしいし、彩度も低いんですが、それでもこうやってそれなりに見れる絵になってるということは、色の分離はちゃんと行われているのでしょう。ちょっと安心しました。

その後、色味やコントラストを調整して、記事の最初の写真まで作れることがわかりました。

ちなみに、SPPのカラーモードで普通に現像したのがコレです。


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原理的には三枚合成の絵からコレを作ってるということなので、SPPはすごいなあと改めて思ったりしました。

今回はちょっと思いつきを試しただけなので、設定とかは何も追い込んでいません。もっとPhotoshop詳しい人なら各色を調整して再現率の高いカラーを作れるんじゃないかと思います。


今回この実験をしたのは、一つ前の記事に書いたように、フォビオンでは高感度になってくると各色の解像度というか、ノイズレベルが大きく違うことに気づいたからです。やっぱり一番上の青が解像度高くて、一番奥の赤がノイズが多いですね。

青の解像度はISO上限の6400を超えてもまだ余裕があるように感じます。でも、その画像をいざSPPで現像しようとすると、解像度の低い他の色に影響を受けるのか、ムラが出たり全体の解像度が落ちてしまうんですね。それは本来の実力が発揮できていないという意味でももったいないなあと。

高感度の場合は青の画像を輝度情報として積極的に扱って、全体の解像度を保ったまま、色だけが薄くなっていくような、そういうアルゴリズムが作れるんじゃないかなと思うんですが、どうなんですかね?シグマの人がこの記事読んでたらちょっと試してみてほしいなと思います。

下の画像はISO6400で撮ったものを三色合成したものです。

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高感度だと合成しても色も何も出ないんですが、ザラッとした質感と予想しなかったノスタルジックな雰囲気が出ました。


今回の実験で、まだまだフォビオンは現像で工夫の余地があるセンサーだなと再認識しました。

皆さんも色々試してみて下さい。



写真が上手くなりたいんだがどうしたもんか(第一回)

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「写真が上手くなりたいなあ」と毎日ぼんやり考えながら、日々のあれこれに追われて生きているわけですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?


今まで適当に写真を撮って、適当にアップしてと、あんまり突き詰めることなく写真と向き合ってきました。


初代DP2を買ってからそろそろ4年経ち、今みたいな適当な写真を撮ってたらどこにも行けないし何も残せないだろうなということを最近ちょっと考えているので、ちょっと本気で「どうすりゃ写真が上手くなるのか?」ということについて考えたいと思います。


さて、ところがそもそも「写真が上手い」というのはどういうことなのか?というのは、実は全然答えがわからない、難しい問題なわけです。

僕がいいと思う写真と他の人がいいと思う写真は違うかもしれないし、その逆もあります。何か絶対的な基準があるかといえば、そうではないような気がします。

コンテストで受賞すれば良い写真なのでしょうか?お金が取れればいい写真なのでしょうか?出版してベストセラーになればいい写真なのでしょうか?

全然わかりません。なので、まず「いい写真とは何か?」について考えないといけない。

その次に、そういう写真を撮ろうとする自分の問題があります。僕は何を撮れるのか、何を撮りたいのか、何に価値を置いているのか、何を目指すべきなのか。

もっと突き詰めて、何で僕は写真を撮っているのか。

そこをクリアーにしないと、出発点がわからないわけですから、どこに進もうとしても道筋を立てれません。

なのでまずは、自分は誰なのか、今まで何を撮ってきたのか、何を考えてきたのかをもう一度考え直す必要があります。

「自分は誰なのか?」からスタートして、「自分はどこに行きたいのか?」をとりあえず明らかにする。

そこがわかればたぶん、じゃあこれから毎日どう生きればいいのかということが見えてくるんじゃないかと思うわけです。



さて、じゃあ「良い写真」とは何か?から始めようと思うんですが、これがわからない。全くわからない。

ざっくり言うと「人を感動させれる写真」は良い写真だと思います。が、人は何に感動するのか?というのは千差万別で正解が(たぶん)ない。

こういう話を突き詰めてしまうと、そもそもアートとは何か?とか、表現とは何か?みたいな大きな話に行ってしまうし、そこでも結局絶対主義と相対主義との二項対立になってしまって、たぶん答えは出ないだろうなと思います。

「だから、正解なんかないんだから自分が好きなものを撮りたいように撮ればいい」というのは、究極的には正しい態度なのかもしれません。が、それもそれで違うような気がします。だいたいこういうこと言うのは努力してない人間の言い訳がほとんどで、それが正しいなら、過去の「偉大な芸術」というものは存在していないはずです。

それはたしかにそこにあるけれど、不定形で見えない。「だからそこを目指すべきではない、目指せない」というのは間違いで、「そこを目指すべきだけれども、その方法は一つではないし、ゴールは明確ではない、ヘタするとゴールなんかないかもしれない」というのが、たぶん正しい。というか、そうやってちょっとずつ探っていくしかないような気がします。

目指すべきものは、かすかにすら見えない。でも、とりあえず前に進まないことには、どうにもならない。

じゃあどうすりゃいいの?という時に指針にすべきなのは、今の自分が立っている場所。つまり、自分の内面にある「表現」のベクトルなんじゃないかと。とりあえずそう考えることにします。


さて、じゃあ、そもそも僕は何で写真を撮ってるのか?


んーとまあ、たいした理由はないんですよ。当時たまたま仕事がなく暇で、たまたま友人の結婚式があって何となく写真でも撮ってみようという気になってて、たまたまネットでDP2の写真を見かけてたまたま買ったら写りが良くて楽しくて、そのままハマっていったという、そんだけの理由です。

僕の問題はたぶんDP2の写りが良すぎて色々勘違いしてしまったことにあると思うんですね。カメラが良いだけなのに、自分が上手いんじゃないかと思ってしまった。




この写真はDP2買って2週間くらい経った頃、つまり写真始めて2週間の時の写真なんですが、これflickrのexploreにいきなり載りました。flickrのexploreは毎日数万枚とアップロードされる中からトップ500だけが選ばれるらしく、けっこう難関らしいんですが、DP2使い始めた頃はたいして努力もしないで適当に撮った写真が次々とexploreに入るんで「いやあ、俺って写真上手いのかなあ?」と思ったりするわけですよ。人間だし。

でもやっぱり写真始めて2週間の知識も何もない人間が上手いわけもなく、ビギナーズラックなだけだろうと今では思ってます。

僕のビギナーズラックはその後、シグマフォトコンテストの第2回、第3回で続けて金賞受賞というあたりでピークを迎えまして、そこからようやく自分の実力を客観的に見れるようになりました。



僕はたぶん、「こういうのが人にウケるだろうな」というのを見極めて、それっぽく撮ってそれっぽく現像するのは得意です。なので、手間暇労力を惜しまなければ、フォトコンで入選しやすい写真を撮るのはたぶんできます。

Getty Imagesという写真を売るサイトにも自分の写真を登録していて、そこでもコンスタントにちょくちょく写真が売れてて、毎月ちょっとお小遣い稼ぎもできています。

んでもまあ、だからどうしたと思うわけです。僕はそれを撮りたいのか?と考えた時に「撮りたい!」と胸を張って言える写真が何枚あるのか?と。今まで撮ってきて、ほんの数枚しかないわけです。

「本当のところでは撮りたいものを撮っていない」という現実を直視するのはキツイので、「まあflickrでそこそこ見られてるし」とか「まあ、Gettyで売れてるし」とか、そういう客観的な(それだってたいしたことない)ところに逃げてたわけですね。

なので、こういう態度を改めないと、たぶん僕の未来はないだろうなと。というか、たぶん今のままでたいして上手くないままずっと上達せずに年月だけが経ってる人間になるよなあと。

それは嫌だなと何となく思うわけですね。

じゃあどうすればいいのか?というのを考えたいんですが、それはまた次回ということで、今回はとりあえずここまで。




写真が上手くなりたいんだがどうしたもんか(第二回)

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さて、前回のまとめ。

良い写真がどういうものなのか、イマイチよくわからない。

自分がなんで写真を撮ってるのかも、よくわからない。

とりあえず今の自分はそこそこ見れる被写体を選んで、そこそこ人にウケる写真を撮れなくはない。

でもそれがいい写真だとは自分ではあんまり思わないし、そういう写真を撮ってても前に進めないような気がする。

じゃあどうしようか。


という感じの話でした。



話が散漫になってるのは考えがまとまってから書いてるのではなく、書きながら考えるという方法でやってるからですね。

結論が最初からわかってる話は考えてから書けばいいんですが、今回のは結論が何かよくわからない話なので、こういうスタイルでやってみようと、そんな感じです。暇な人はお付き合いいただければ幸いです。



さて、前回書かなかったんですが、世間的には「良い写真を撮る方法」みたいなものはけっこう広く行き渡っています。

構図がどうのこうの、シャッター速度や絞りがどうの、露出や現像はこうした方がいい的な、そういう技術的な話だったり、あるいはこの季節はどこそこに行けばかれこれという写真が撮れる的な、そういう話です。

カメラ雑誌とかはほとんどがこの手のノウハウで記事が埋まってて、そういう本が何種類も出てるのでそこそこ需要はあるのでしょう。

僕も写真始めた頃は、その手の本を何冊か買って、記事を参考にしつつ写真を撮ったりしたのですが、すぐに飽きました。

一応こんなのも読んでました


何でかというと、そういう記事を参考にしても記事に書かれた以上の写真は撮れないからです。記事はたいていプロが撮ったものなので、技術的に欠点はほとんどないだろうし、そもそも撮る前に記事を見ているわけですから、手法を真似して撮った自分の写真にも既視感が出てしまうからですね。


たぶん、「既視感」というのが、僕の考える「良い写真」のキーワードの一つだと思います。

前回の記事で「良い写真」のとりあえずのポイントは「感動すること」だと一応定義したんですが、感動するためにはそれは見慣れたものじゃダメだと思うわけです。

どんな音楽でも芸術でもいいんですが、最初にそれに触れた感動は回数を重ねるごとに褪せていきます。「今まで見たことがない」ことが感動の要素の一つなんじゃないかなと。なので、繰り返し撮られたモチーフや構図、被写体には基本的に既視感を抱く。そうなると、そこから生まれる感動は弱くなるんじゃないかと思うわけです。


じゃあ、常に新規で奇抜であればいいのか、というとそんなこともなくて、いくら新しいものであっても良くないものは良くないです。そもそも最初から理解できないものは、感動も何も産まないわけですから。一部の現代美術みたいに、あちら側に行きすぎてわけわからなくなっても、それが人に伝わらないんだったら、やっぱりあんまり意味はないんじゃないかと。

ということで、たぶん良い写真というのは

「使い古されて陳腐になってしまったもの」


「新しすぎて理解不能なもの」

の間にあるんじゃなかろうか、と


少なくとも、今、安易に手にできるような撮影方法や、構図、被写体では、たぶん人は感動しない。何でかというと、僕らはメディアに囲まれて生きているからです。

テレビ、雑誌、街頭のポスター、ネット、ありとあらゆる場所で「画像」を目にするし、それを避けて生きることは不可能です。それらのイメージは広告と結びついている事がほとんどで、広告というのはたくさんの人の目を集めるためにキャッチーなものが意図的に選ばれてます。

逆説的ですが、現代に生きる人たちは「人の注目を集めるキャッチーな画像に晒されすぎて、それ自体に飽きてしまい不感症になってる」んじゃないかなと。

なので、ノウハウ本が「簡単に撮れる」と提示するキャッチーな画像を、僕が再生産することに、少なくとも自分は意義を感じないわけです。もちろん、結果的にそういう既存のイメージの影響下にある写真を撮ってしまってるとは思うんですが、少なくともそこから離脱するという意志を僕は持っていたいなと。


たぶん僕が撮った中で一番キャッチーなのはこれ



でも、じゃあどこに行けばいいんだ?というのが全く見えないので、ちょっと話を変えてシグマの話をします。僕が自分の写真について考えるとき、シグマとフォビオンの話は避けて通れないので。


結論から先に書いてしまうと、シグマでなければ自分の写真は撮れないということは、全くないです。

以前友人の持ってたペンタックスのK-xを借りて使ったことがあるのですが、RAWで撮って現像する限り、フォビオンと比較した時に圧倒的に劣るということはないと感じました。

Pentax K-x タムロン 90mm macro

Pentax K-x タムロン 90mm macro


どのカメラでもレンズでも一緒だと思うんですが、適当に撮ったらそこそこのものしか出てこないし、ちゃんと手間ひまかけて考えて撮れば、いいものが撮れる、それだけだと思います。


じゃあ、なんでシグマ使ってんの?何でシグマの情報ばっか毎日探して、記事翻訳して、ノウハウを書いてって、別に誰に頼まれたわけでもないのにシグマのファンやってんの?

とまあ、そんな疑問が浮かぶわけです。もちろん対外的にはフォビオンの写りが良いからとか、シグマのカメラ哲学が好きだからとか、そういうことは言えるんですが、ぶっちゃけそこら辺も二次的な理由に過ぎません。

一番の理由は、2009年の5月に僕は無職でやることが何もなくて、昼夜逆転で家に引きこもって生きてるのか死んでるのかわからない状態だったのが、DP2を買ってから生活が一変して、毎日外に出かけて写真を撮って、flickrに写真をアップしたら評価されて、twitterつながりで知り合いがたくさんできて、生きる目標を何とか見つけたからです。

なので、シグマとDP2は命の恩人だと勝手に思ってます。僕がシグマ使ってるのはこれだけが理由で他には何もありません。シグマがカメラ作るのやめたらたぶん僕も写真やめると思います。それくらい個人的で主観的な理由です。



僕のスタートはたぶんここなんだろうなと、今でも思います。あの時買ったのがDP2じゃなくて、もっと使いやすくて簡単にそこそこ綺麗な写真が撮れるカメラだったら、たぶん僕はすぐに飽きてしまって結局引きこもったままだったんじゃないかと。

ホームランか三振しかないシグマのカメラだったから、僕はあれこれ工夫したりカメラや写真の勉強したりしなければいけなかったし、そこでホームランを出そうとする欲望が、そのまま自分が生きる理由ですらあったわけです。

で、DP2はそれに答えてくれたわけですよ。

SIGMA DP2


今の僕は仕事も見つかって結婚もして子供もできてと、2009年の時とは全く違った生活をしていて、あの頃のような写真は撮る気はないし、ぶっちゃけ撮れません。平日の朝4時に家を出て日の出や朝露を撮るとか無理です。

写真を通じてしか、世間とつながりを保てないと当時は本気で感じていたと思うので、そんな意気込みでシャッターを切ってる人間の写真に力が宿らないわけがないです。写真始めて1年も経ってない素人だったのに(自分としては過大な)評価を得てこれたのは、単純に切実で真剣だったからだと思います。


逆に言うと、そんな感じでスタートした僕の写真が、生活が普通になるにつれて撮る必然性をなくしていったのも、また避けられないことだったのでしょう。

だからまあ、写真なんかやめてしまえばいいんですが、今やめてしまうのも何だかなあという、ちょっとした引っ掛かりを感じているわけです。何かを感じてなかったらこんな文章書いてないわけで、それが何なのか、今の時点でははっきりしない。

それは何なんだろう?というのを、次に考えてみようと思います。





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